待ちつ待たれつ



「財前はよー」
「あーはいはい今行きますわぁ」

なんでもかんでもなんでそんな早いんやアンタ
それちゃんと俺と同じ仕組みの服なんすか

「財前って着替えんのいっも遅いやんな」
「はぁ、そうっすか」
「もっとちゃちゃっと着替えなあかんで!」
「別にえぇやないですか、部活終わりなんやし」
「あかん!」

なんでや
俺には俺のペースがあんねん

「なんであかんのですか」
「な、なんでもや!」
「俺理由ないと急いだりできへんのですわ」
「〜っ」

謙也さんは物事がさっさと進まないのも嫌いだ
めっちゃせっかちや
せやから大抵のことは聞く前にちゃっちゃと理由から言うんやけどな

「そんなん、はよ帰りたいからやん、…財前と」
「は?」
「だーもうっ!せやから!はよ着替えて帰り道に寄り道してみたりしたいんや俺は!!」

なんでキレてんねん

「はぁ、つまりは放課後デートしたいんっすか」
「でっ、」
「せやったら明日からがんばりますわ」
「…ぉ、おん」
「まぁでも俺は、謙也さんが口尖らせて待っててくれるんも好きなんですけどね」
「は、はぁ?!」
「待つん嫌いや言うて俺のことは待てんのが好きやて言うとるんすわ」

夕焼けなのが残念や
可愛らしく頬を染める顔がようわからへん

「ぉ、お前だけやからなっ!せやけど俺はやっぱ待ちたくないねん」
「はやく一緒に帰りたいから?」
「〜っせや!悪いか!」
「悪ないっすわ、めっちゃ嬉しい」

柄にもなく、自然と笑みが零れた


あぁ俺かて、そんくらい好きなんや、この人が
どうしようもなく

せやから、謙也さんのスピードに着いて生活しとったら、簡単に俺のことさえ待たなくなるんやないかって思って
どこかで俺は、不安やったんや
待ってくれる謙也さんの姿を見てないと
そんなんせんでも、着いていけなければ待ってくれるくらいに優しい人だと知っていたのに

「ほな明日は謙也さんより早く着替えたりますわ」
「望むところや!絶対負けへんで!」
「負けたらぜんざい奢ってくださいね」
「はぁ?!」
「絶対負けへんのでしょ?スピードスターなんやから」


そして次の日、見事俺はぜんざいを奢ってもらうことに成功した

そんなん当たり前やんか
謙也さんは俺に関わる間は待てができるんやから、ねぇ?




+++*

謎や。
待てるけど待ちたくない、待つより一緒に居たい、みたいな。
とにかく待つのは性に合わない謙也が好き。
そしてそんな謙也が自分を待てることに安心してた財前。
みたいのを書きたかった。





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