今日貴方に伝えたいことは、



普段より早起きをした。どのくらいかというと、一周前のニュースが見れるくらいや。
清々しい朝とはいくわけがなく、めっちゃ眠い。二度寝ができたら幸せだろう。

けど、今日の俺にそんなことは許されへんのや。

「光がこない早起きして、どないしたんまだ朝練にも早いんとちゃうの?」
「んー…」
「もう、そないぼーっとしてこぼさんとってよ〜」

普段のおかんの小言を華麗にスルーできるくらいには眠い。何も考えたくない。
あぁでも、そろそろ飯もそこそこに家をでなければ。


「さっむ…」

真冬に比べればだいぶ落ち着いたとは言っても、早朝は冷える。
マフラーをぐるぐる巻きにして、ポケットに手を突っ込む。
今日は通学中いつも耳に流れている音楽はない。
玄関から、いつもとは真逆の方向へ。
まだ暗くて、犬の散歩をする人がたまに居るくらい。
はぁ、と息を吐きだして、足早に向かうのは学校ではない。



顔を合わせるのは、卒業式以来に思う。特に連絡もしなかった。
それはなんとなく、やけど。

今日は、絶対に会って直接、言わなきゃいけないことがある。
別にガチガチに緊張して決心してるわけではなく、ぼんやりとだけどしっかりそう思っているだけ。


随分久々に見るような建物は、来慣れた謙也さんの家だ。
もう明かりがついているから、きっと謙也さんも起きているに違いない。
部活も学校もなくても、無駄に早起きしてるんやろな。

呼び出すのに電話、では駄目や。
音声発信をすんでのところで思いとどまって、面倒ながらもメールを打つ。
送信完了の画面が表示されてコンマ数秒。
ドタバタとまだ薄暗い早朝に迷惑な音は徐々に玄関に近づいて、

「財前!?」

ほんま、うっさいなぁ。

「え、何いきなしどないしたん、てか早ない?お前こんなけ早起きできるんやったらいつもちゃんと、」
「謙也さん」

朝からよう回る口やな。

「おめでとうございます」
「は、ぇ、と…それやったら卒業式に聞いたけど、」
「ちゃうわ、…誕生日」
「ぇ……え、えっ!!!?」
「…ほんまうっさいっすわ、近所迷惑……」
「やって、いや、これはお前がっ」

あたふたと慌てる姿を見るのもなんだか久々に思う。
それくらいにはもう、日常は日常でなくなったのだ。
だけど俺はこうして謙也さんに会いに来るし、謙也さんはここに居る。
結局、ほとんど変わらないと俺は思う。
だから、だから特別連絡を頻繁に取る必要なんてない。
こんなことで疑うような、不安になるような気持ちで、好きで居るわけやない。


そんな夢を、まだ見ていたっていいと思ってる。


「誕生日、おめでとう謙也さん」
「お、おん…」
「すんません、プレゼントは買うてへんのですけど」
「や、えぇよ別に」
「今日、何か予定あります?」
「え?予定はないけど」
「ほな帰りまた寄りますわ、部活も午後ないんで」
「あ、あ…うん」
「あぁ、そろそろ行かな」
「気ぃつけてな」
「ほなまた」
「…おん」

照れくさそうに笑って送り出す謙也さんに、なんだかこっちまで顔が熱くなって。
早く冷めてくれと思いつつ、ニヤけた口元はマフラーに埋める。

今日なら走って登校できてしまうんやないか、なんて、俺は本当に謙也さんに会うと普段自分では絶対にたどり着かない考えが浮かんでしまって困る。


冷えた体が胸の内の温度であたたまってどうにもむず痒い。
どうにか放課後までにおさまって、あの人の前ではカッコつけさせてや。



+++*

謙也さんおめでっとおおおおおおう!
3年生のお誕生日は卒業後とか…切ない!!(;_;)

早起きして謙也さん家に行っておめでとうって言って登校する財前くんとか男前やん…ってなって。
謙也さんにはカッコつけマンな財前くんは可愛いなって思います。
後々心臓痒い!ってなってたらいいなと思います。で、その状態をよく白石に目撃されるとか。
謙也さんは喜怒哀楽を隠せないよね。感情表現までスピードスターやっちゅー話や!


何はともあれ謙也バにお話書けてよかった…!





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