星に願いを、愛のせて降らすよ



「え?財前天の川見たことないん?」
「はぁ」
「めっちゃ損しとるわ!ごっつ綺麗やで?」
「別に興味ないっすわ、ただ星が集まっとるだけやないですか」
「はぁ〜夢のないやっちゃ」
「大きなお世話っすわー」

季節は7月、いよいよ夏が始まったといったところだろうか。日も長くなり夕方になっても暑い。
そんな部活終わり、謙也さんとソーダバーをかじりながらそんな話をした。
七夕なんて、大して気にしたことがなかった。

「せや、今年の七夕土曜日やろ?一緒に星見ようや」
「はぁ?」
「今週、日曜は部活ないやんか」
「めんどいんですけど」
「おまっ、めんどいはないやろ!せっかく俺が誘ってやってるんやで?!」
「はぁまぁそれはえぇんすけど、わざわざ夜に星とか」
「なんかえぇやんか、七夕に星見るって」
「あーもうほんまロマンチストっすね」
「これくらいは普通やろ?」

近頃はどちらかというと単に願い事するっていう程度だと思うのだが。
存外ロマンチストな謙也さんのせっかくのお誘いなので一応返事はYESにしておいた。

「ほな土曜の部活終わって俺一旦家帰ってからお前ん家行くわ!」

まぁその嬉しそうな笑顔が可愛らしくて。
謙也さんは喜怒哀楽の喜と楽が飛び抜けてわかりやすい。
なんだかんだで俺も嬉しくないわけではない。家に着いて、上機嫌で甥に構ってやっていたらお兄に引かれたくらいには機嫌がいい。








そして七夕当日。

「お邪魔しますー」

部活中からニコニコと、いかにも楽しいことがありますという顔をしていた謙也さんのせいで部長にやたらとからかわれ若干気分がよろしくなかったが、そんな謙也さんが可愛いのでよしとする。

「あーとりあえず夜までゲームでもするかー?」
「そうですね、バイ●ハザードでいいですか」
「おっ前な、もっとこう明るいやつを、」
「怖いんすか」
「怖いわけないやろ!ただあれや急に出てくんのびっくりするやろ!!」
「謙也さん、扉入って出るんだけはめっちゃはやいですよね」
「馬鹿にしとんのか」

結局クロッ●タワーをさせたら謙也さんは隠れきれずシザーマンに殺されまくってキレてやめた。

「あ」
「ん?」
「そういえば星見るってどっか行くつもりなんですか」
「あー、学校でえぇかなーって」
「なんで学校なんすか」
「ん?やって校庭やったらあんま邪魔になるもんないし見渡しえぇんちゃう?」
「はぁ」

まぁ近いからえぇけど。
学校で恋人と七夕に星見るとかベタすぎて恥ずかしいと思うのは俺だけなんだろうか。



「おっしゃ、ほなそろそろ行こか」
「へーへー」

夜はまだ、少し肌寒いかもしれない。

人通りの少ない道を学校へ向かって歩く。
曇ってなくてよかった、とか思うあたり俺も相当浮かれている。が、繋いだ手をぶんぶん振って歩く人には伝わってないようだ。

「うおー、なんや夜の学校て新鮮やなー」
「そっすか?冬とか下校時間似たような感じやないですか」
「お前はほんまに可愛げないの」
「で、天の川て」
「どこに見えるんやろなー」
「は?」
「や、俺もな、どこに見えるとかは知らへんねん、てか今日見れるもんなんかな」
「おいこら金髪ふざけ倒すなや」
「すまんって!や、俺もめっちゃちっさい頃見たっきりやねん!」

思いついたら一直線。まったく、以前なら馬鹿馬鹿しくて付き合いきれなかっただろうに、そんなのもこの人らしいで済ましてしまうんだから自分も随分と絆されてしまったものだ。

「まぁでも、星綺麗やん?晴れてよかったなぁ」
「…そっすね」
「!」
「なんすか」
「や!なんも!」

あぁもう、そんなふうに笑われたら毒気も抜かれてしまう。
素直に楽しんでしまおう、なんて、この人が居なかったらきっと思えなかった。

「財前、願い事決めた?」
「は?」
「七夕言うたら願い事やろ」
「や、短冊に書くもんやろ」
「せやから!短冊も笹もないから直接星にすんねやないか!」
「…はぁ」
「あからさまに馬鹿にしたような目ぇすんなや」
「ま、えぇっすわ」


何故か二人して、まるで初詣のお参りのように手を合わせて。星に願いを、なんて恥ずかしいことを素でやっている自分がおかしくてたまらない。

けど、俺は別に星に願うことなんて何もない。

「謙也さん」
「何?」
「俺、別に星に願うことないんすけど、謙也さんにならお願いあるんすわ」
「俺に?」

ロマンチストに中てられて、たまには夢を描いて見てもいいかもしれない。

「なんや、俺にできることなら言うてみ!」
「ほな、謙也さんにお願いです、」
「おう!」


















「俺に、…俺に謙也さんの一生をください」


















「は、へ、ぇ?」
「それが俺の願い事、っすわっ」

感じたことがないくらい、心臓がバクバクとうるさく動いて。
涙が滲みそうなくらいに顔が熱くて。

「お、っおやすい御用や!浪速のスピードスターに任せとけっちゅー話や!!」
「っなんすか、それ」
「なんやねんお前、かわえぇとこあるやないか」
「うっさいっすわほんま…」

繋いだ掌とか、背とか、まだまだ全然足りなくて。

「はは、なんやせやったら俺もわざわざ星なんかにお願いせんでよかったわ」
「?」
「俺の願い事教えたろか」
「はぁ」
「お前とずっと一緒に居られますように」

キラキラ弾ける笑顔とか。
もしかしたら一生敵わないかもしれない。

「それこそおやすい御用っすわっ」


恋は惚れた方が負け。あながち嘘じゃないかもしれない。

ずっと一緒に居てあげます、だから一生俺の隣に居てください。




+++*

謙也さんの一生をくださいって言わせたいがために書きました。
財前くんはお兄ちゃんな謙也にはなんだかんだ勝てないと思います。
ヘタレな謙也も好きやけど、よっしゃよっしゃかわえぇやっちゃ!っていうお兄ちゃん謙也も好き。

ゲームのくだりは勝手な趣味。絶対隠れきれないよ謙也は。私もよくぶっ刺されて死にました。






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