NOVEL | ナノ

 ベーコンチーズバーガー

マジバのロゴを、某有名チェーン店の色目にしてしまいました。
アニメ違った。でも↑そう思って読んでいただけるとありがたいです。
多分黄瀬に夢を見すぎている。





マジバに行こうって、赤ちんを誘ってみた。



ベーコンチーズバーガーとフライドポテトコンソメ味



うん、行ったことなくはない…と思うんだ。

だって同じ部に2人は中毒がいたもんね。

ほんとは3人かも、黄瀬ちんはモデルだからあんまり行かないね。
でも好きなの。知ってる。皆から認識されるって、モデルって大変だね。

注目されるのめんどーなの、俺もちょっと分かるよって。

“いやいやモデルの気持ちとか紫原っちには分からないっス(笑)。体重管理っスよ。”
とか返されるかと思ったけど、言ったら意外と黄瀬ちんは真剣に俺の目見て、ちょっと泣きそうな顔になって一回頷いたの。
そっから、前より黄瀬ちんと仲良くなったなー。
同じクラスで楽しいなって思ったの初めて。

…何だっけ?そう、マジバ。

とにかく中毒(バニラシェイク中毒と、もう一人は、分かんない。多分ただのジャンキーだと思う)が2人もいたから、行ったことはないことはないと思うんだ。
でも俺と行ったことはなくて、それに、いろいろ体のこととか気にしてるぜんこくまれにみるちゅうがくせー(=全国でも稀にみる中学生。俺に言わせれば、例えば着色料のない世界なんて生きていられない)だからね、あんまりそういうのもね、食べないと思うの。

ベーコンチーズバーガーとフライドポテトコンソメ味。

だけど、行ったことくらいはあるでしょ。
赤い地に黄色い字の、あの印象的なロゴと色。
赤ちんと黄瀬ちんだーって、行く度思ってたの俺だけかな。
きっと俺だけ。
じゃー内緒にしとこ。

中学生の思いでの、キラキラってしてる部分。
だいじに取っとこー。

…何か、後半、いろいろあったもん。

そのバニラシェイク中毒が部活抜けてから、精神的にガタガタだったよ。俺。
ううん、その前に赤ちんが。
俺はいつもみたくただおろおろしてて、何もできなくてあたふたしてて、でもいつもみたくは面倒だなとか珍しく思わなかったんだ、お願い面倒じゃないから神様教えてください、何とかする方法はないのって、だいすきな2人に悲しい顔させたまま卒業させたくないよって、思ったけど、どうにもならなかった。

ずーっと思ってた。
部活中、マジバのロゴみたいに鮮やかだった君をずーっと見てた。
ずーっと思ってた。
部活やめて、前よりここで暇潰す回数増えたかな?ロゴ見て、帰ってくる気にならないのかなって、ずーっと考えてた。

でも、部活中そんなこと考えてたら、集中してないって怒られちゃって(赤ちん)。
でも、移動教室ですれ違う時とか話しかけても、挨拶返すくらいで素っ気なくなっちゃって(黒ちん)。
悲しくて悲しくて悲しくて、二回泣いちゃったのは内緒ね。

そのうち一回は黄瀬ちんとの内緒。
引退する直前、赤ちんも峰ちんもいない日、誰も自主練で残らない日。
夕方になって、部室に一人残っちゃった。
ううん、何かいろいろ考えたくて。部室の整理もちょっとしようって思った。
黒ちんは私物全部器用にマジックみたいに消して行っちゃったけど、誰かとの共有物はまだ溢れてて。
分かるんだよ、赤ちん。見るたび痛そうな顔するよね。
多分、それを整理できるの俺しかいないんだ。
黄瀬ちんは一年の頃の私物分かんないし、一番黒ちんと付き合いあった峰ちんは残念なことにそういうとこ繊細に出来てなくて(一番多いの峰ちんとの共有財産だよね)、みどちんは峰ちんとはちょっとタイプが違うけど、やっぱりそういうとこ繊細に出来てないし…。
俺のロッカーにもね、黒ちんと一緒に、買ったの、お菓子、結構あって。
ごめんねみんな、ロッカー開けるね。
多分触れないようにしてる黒ちんとの財産、捨てちゃえ。
だってみんな見ないようにしてるじゃん。触れないようにしてるじゃん。
同じ校舎の中にいるのに、黒ちんに話しかけようとしないじゃん。
何で?
別に普通じゃん。それはね、いろいろあったけど、部活やめるとか、よくある話じゃん。
辞めてったのいっぱいいるじゃん(俺が引導渡したのもあるね)、でも、その後何か引きずったりしないじゃん。
…うん、でもいいや。みんないろいろ考えて、そうなんでしょ。
だったら俺もう何にも言わないし。
それに、だったらいらないよね。
モデルやってる黄瀬ちんが、初めて表紙飾ったって言ってた雑誌(サプライズで買って、おめでとうって言ってあげよって言い出したの黒ちん。黄瀬ちん、嬉しそうだったね)、峰ちんと黒ちんが一緒に買ってきたお土産(…どこのお土産だっけ)、お菓子(…もう、一緒にお菓子買いに行ってくれないのかな…)、黒ちんがみどちんのラッキーアイテム持って来たの(ところでこれ何?ペンギン?イルカ?アシカ?)、2年のとき初めてスマホデビューした赤ちんのスマホで撮った、みんなで写った写真。セルフコピーで何枚も現像したよね。うちのママちんに見せたら気に入って、うちの居間には飾ってあるけど、みんなの分どうなったんだろ。一枚多く印刷して、部室に置いてあったの、これも。
いらないでしょ。
…捨てたくないから、捨てないけど(お菓子は今日のうちに持って帰っちゃおう)。
…捨てたくないから、捨てないけど(他のも、俺がもらっちゃうね。今日のうちに持って帰っちゃおう)。

まとめてたら、何か泣きたくなって。
どうせ誰もいないから隅っこで丸まって、声殺して泣いてた。
そしたら、気が付いたら黄瀬ちんがいて。
真面目に、ホラーだったと思うよ、2m超のが夕方の部室の隅っこで座り込んで丸まって、声にならない声あげて泣いてるんだよ。怖いじゃん。ごめん、黄瀬ちん。
でも、黄瀬ちんは膝ついて、目線合わせて真剣そうに俺の目見て、その端整な顔くしゃってして、涙ぽろぽろ落として、だから、もう、2人で泣いたの。
声あげて、子供みたいにしゃくりあげて、泣いたの。
だから、これは黄瀬ちんとの秘密。
あと一回、おうちで泣いたのも、秘密。

…そうそう、マジバだよね。
だからね、赤ちんも、行ったことはあると思うの。
だけど、俺とは多分行ったことないから(一緒に帰るとき、俺はコンビニ寄ってお菓子買う方が多かったから。みんなで駅前まではいっしょに帰って、マジバ行くかコンビニ行くかで分かれて、赤ちんいつもコンビニ付き合ってくれたね)、行ってみようって誘ったの。

「…うん。」

たまには良いかもしれないな、なんて。
気の利いた言葉をつなげるでもなく、でも了承してくれた赤ちんに感謝。



赤ちんは、高校で京都に行っちゃうんだ。
俺は秋田行くけどね。寒いけど。やだけど。何か、決めたの。
洛山も行けないことはなかったよ?(峰ちんとか黄瀬ちんなら無理だっただろうけど俺ギリ行けたし)赤ちん心配だし、一緒に行こうって、思った。
でも、見学とかしてみて、やっぱり洛山は何か違くて、だから赤ちんすげー心配なんだ、本当はどっか他の所に行ってほしい。
別に陽泉一緒に来てほしいとか言わないから(赤ちん寒いの苦手だね)、海常でも秀徳でも桐皇でもどこでもいい。だけど、俺がどうこう言えることじゃなくて。
だから、何も言えないけど。
せめて、マジバくらい行こう。
赤ちんが京都に行っちゃう前に。

「んー、どれもオススメだけどねー、」

どうしよう、赤ちんにオススメするの考えてなかった。
来たことないってことはなかったらしいけど、主食もの食べたことないってびっくり。
シェイク(ごめん、赤ちん、こころ痛かった、かな)か飲み物か、シェアしたポテトとナゲットだけだって。
うーん、どうしよう。

俺お菓子は新作探すの大好きだけど、でもこういうとこは違くて。
決めたのそればっか頼むタイプ。他の全く頼んだことないわけじゃないけど…。

「紫原はどれにするの?」
「んー、俺はねー、」

いっつも、ベーコンチーズバーガーとフライドポテトコンソメ味。
ナゲットつけるなら、ソースはバーベキュー。
今日はつけよう。

「じゃあ、俺もそれにする。」

言って、赤ちんはにっこり笑った。
だって、紫原はそれが一番好きなんだろう?
どうせなら紫原のオススメが良いよ。

あ、そっか、俺の好きなのが、俺のオススメなのね。

じゃあそうしよう。ドリンクはつけますか?俺は白ぶどうジュースつけます。
じゃあそうしよう。ドリンクはつけますか?…そこは、「アイスコーヒー」。…うん、赤ちんだね。

「で、どうしたの?いきなりマジバ行こうって。」
「んー、特に理由、ないんだけどさ、」


あ、まずい、天帝の目ばりに鋭い洞察力、見透かされる…!って思った次の瞬間、赤ちんは不意に笑い出した。それも結構、あははって、大きく。
あ、赤ちん楽しそう。良かったぁ。
で、何で笑ってんの?

「紫原、ほっぺた、ケチャップついてる…。」
「あ。」

よくやっちゃうの、コレ。ベーコンチーズバーガーなめちゃダメです。
ハンバーガーよりケチャップ多くて、ベーコン食べてるときとかすぐついちゃうんだよ?
初めて食べるのにきれいにお口に入れる、赤ちんがエレガントすぎるんでーす。

でも、考えようによっては俺ぐっじょぶかも。
最近ずっと、ずっと笑ってなかった赤ちんが、今は少しでも笑ってる。
最近ずっと、ずっと笑ってなかった赤ちんが、今は少しでも楽しそう。
(でもそろそろやめないと腹筋痛くなるよ赤ちん?)

そのあとも、他愛ないことでいっぱい喋って、いっぱい笑った。
赤ちんも俺も、笑い過ぎて目に涙溜まった。でも今日はそこに悲しい涙はなかった。
本当に楽しかった。

少し、カラー映像の赤ちんを、取り戻せた気がした。



黒が抜けてから、何でかな、君は無彩色になっちゃった。
赤くて絶対的なあの威光はどこへ行ったの?何でモノクロの笑顔を浮かべてるの?
それが赤ちんの思うとこなら、仕方ないよね。でも、違うよね。不可抗力だよね。
出来ることなら、有彩色の君を取り戻したい。
鮮やかな赤で彩られる屈強な精神、優美な肉体、繊細な動き、安心させてくれる笑顔。
そういったもの全部、ゆっくりでもいいから。
ああ、でも、時間がなくて。
高校生になっちゃう前に。

あ、違うよ?短期決戦に持ち込む気はないの。
高校生になっても、俺はこの努力やめないつもり。
赤ちんずっと京都から動かないってことはないだろうし。
赤ちん、黒ちん。だいすきな2人のことだもん。面倒だなんて思わない、

ただ、俺が気にしてるのは、あれなんです。

「赤ちん知ってた?マジバって、京都だと茶色地に黄色の字なんだって。景観なんとかで。」
「それ、修学旅行前には既に皆知ってることじゃないか?実際バスに乗ってるときガイドさんが話してくれたろ?そのとき実際に見たじゃない。」
「んー、そーなんだけどー。」

赤ちん赤ちん、分かりますか?

俺が気にしているのはそれなんです。

君の鮮やかな赤色が、京都に行って変わってしまわないか。

それがすごく怖いんです。

茶色は無彩色じゃないけど、でも、でも、赤ちん、じゃ、ないよ。

ねえねえ赤ちん。
嫌いにはなんないよ?例えどんな赤ちんでも、俺はだいすき。
無彩色のモノクロの、真っ黒と真っ白の君でも、茶色の君でもだいすき。
でもでも赤ちん。
出来ることなら、その輝きを、その光を、失わないで。
京都に行っても、京都でも、あなたの色でいてください。

人間の可視光ってさ、赤燈黄緑青藍紫って、みんな知ってる?
紫色の俺から見たら、一番遠い赤色なんだけど。
その、波長が長くて、あったかい光がだいすきなんですむらさきは。

「ヘンなの。」
「あららー?でもそれっていつもじゃないの?」

よく言われるよー。

「…そうだね、」
「あ、赤ちんひどー、」
「俺も。」

言って、にっこり。
あれ、俺がにっこり?
あれ、俺もにっこり。
ああ、てことは、君も。

そう、そんな風に、笑っていようね。赤ちん。



ベーコンチーズバーガーとフライドポテトコンソメ味



京都で、行ったら思い出してください。今日食べた味。多分どこでも変わらないはず。

京都で、見たら思い出してください。茶色と黄色のロゴマーク。

でも、出来ることなら染まらないで。

赤く輝く、君でいてください。

スペードとクローバーと、ハートとダイヤのトランプが、またシャッフルできるようになって遊べるように、むらさきいろはまだまだ頑張るので。

どうか、そのままの君で。

end.



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