NOVEL | ナノ

 六兆年と一夜物語

IAちゃんの歌、k/e/m/uさんの素敵な曲です。
久々に聞いて、その設定で紫赤パロディが出来るな…と思ったらもう止まらない(笑)。
切なくて物悲しい、でも素敵な歌なんです。
実際に小説にすると壮大なスケールになりそうなので、設定のみここに。

あのすばらしい世界観を崩しやがって…!ということになりかねませんので、反転で。
↑となりそうな方、そういう捏造が苦手な方はご遠慮ください。
結構悲惨な設定を作ってしまった…。
大丈夫な方は、曲を聴きながら…どうぞ。

リクくん
むっくん。名前は”あつし”。
母親は彼を生んで亡くなる。
乳児の頃から体が異常に大きく、村の慣習として忌み子として扱われる。
村はずれの山奥で鎖に繋がれていて、行動できる範囲は半径20 mくらい(割と広い)。
施し程度の食料しか与えられないが、それでも体は大きくなり続ける。
そしてますます忌まれる存在となる。
普通の人間がどういう暮らしをしているかを元々知らないので、日々悲しくはない。
が、たまに見える親子連れの、手を引く親に引かれる子供に、何とも言えない心持ちになる。
自身の手を見る。その手は誰にも握られたことはない。
時折思い出したように暴力をふるいに来る村人に虐げられ、殴られ蹴られるが、反抗はしない。
黙って我慢していれば、そのうち終わると体が覚え込んでいる。
言葉を習っていないので、喋れない。考えるときは言語。声が出せない。
ある日、村はずれまでやってきた”せい”と出会う。
初めて手を握られる。初めて、温もりが分かる。
初めて、声を出す。”せい”の名前を呼ぶ、“せーぃ、”がやっと。
色々なことを覚えていく。
足が不自由な、これまでも不自由だった”せい”を背負い、肩車する。
笑顔の”せい”を見る。それがとても楽しくて、幸せ。




IAちゃん
赤ちん。名前は”せい(せいじゅうろう)”。
お妾さんが生んだ子。実母は亡くなる。
幼少から虐待を受け、両足を折られる。治りかけると、折られる。
そのため歩けず、12歳になるまで外に出たことがない。村人のほとんどが存在を噂程度にしか知らない。
そろそろ身請けされる歳、あるいは売りに出される歳と判断され足は治療されたが、もう歪に変形していて普通に歩くことは出来ない。引きずって歩く。
長い時間立っていることも出来ない。
ある日、村はずれにいるという”あつし”という鬼の子に興味がわき、家の者の目を盗んで”あつし”の元へやってくる。
“あつし”は鬼の子ではなくて、”じぶんとおなじ”にんげんだと知る。
近づいてはならないという掟も知っているが、それ以上に”あつし”と話がしたかった。一緒にいたかった。
後は、自分はどうなっても良いと思っている。
“あつし”は、立ったり歩いたりが不自由なせいを背負い、肩車する。
もの言わない”あつし”が、楽しそうに目を細める。それがとても嬉しくて、幸せ。



2人で過ごした、刹那の最大幸福。
だが明朝、”せい”の父親に見つかる。
“せい”を乱暴に掴み引きずり、怒鳴りつけ、殴る”せい”の父親に、”あつし”は初めて、そしてどうしようもない怒りを覚える。
(せいに、なにしてるんだし…っっっ!!!)
彼の手から”せい”を救いだし、彼に殴りかかる。蹴る。力の加減が分からない。頭を持ち上げ、頭蓋骨を、握り潰す…。
そこで、自分の死期を悟る。
村人に手をあげその命を奪ったとなれば、この命もこれまでと。
だが”せい”だけは助けようと考える。誰か別の村人が来たタイミングで、彼のことを襲えばいい。
そうすれば、”せい”はたまたまそこに居合わせ、凶暴な忌み子に襲われただけ、で済む。
“せい”は蹲ってすすり泣いている。
だが、次の村人が来たとき、”せい”は”あつし”に駆け寄り、ぎゅっと抱き着いて”あつし”を庇う。
「お前ら、何を…ッ!!??」
("せい”、)
(なんで、”せい”ばっか…!!!)
村人は、”あつし”を恐れ”あつし”を攻撃しようとしない。
“せい”がまたも狙われることに、”あつし”は激昂する。
そうして、また、”せい”を助ける…。



その村に、村人はいなくなる。
村はずれの山奥の、古ぼけた杭から繋がれていた鎖が、断たれている。
そこには、人間になりたかった少年も、虐げられていた少年も、どちらの姿もなかった。



だが、風の噂に聞こえてくる。
京の都の町はずれに、よく当たる占い師がいるらしい。
陰陽師の血を引くその占い師の元に、最近少年が2人弟子入りした。
1人は寡黙で物静かだが、とても背が高く、神棚を飾ったり鳥居を建てたりといったことにその能力を発揮している。腕っぷしも強いので、何かと頼りにされる。常に何か菓子を食べている。
名を”紫”という。
もう1人は足が不自由らしく、歩く際は足を引きずっているものの、とても聡明で頭が切れる。
薬の調合も得意で、このままでは診療所が開けそうだと周りの者に囃される。
名を”赤”という。
祭りともなれば、紫が赤を肩車して見物に訪れる。

紫は祭りの菓子を占い師や赤にねだり(声には出さず、目で)、しょうがない、と2人が応じると嬉しそうに笑うのだ。

赤は、普段とは違う、高く安定した視線で見る祭りが大好きだ。
大きな猫目を輝かせ、通る神輿を眺めている。

占い師はこの2人の素性を知らないまま、猫の子を引き取るように招き入れた。
雨の日に、2人肩を寄せ合い(というか紫が赤をすっぽり覆う形で)震えていたが、こうして回復し、今では町の一員となっている。
陰陽師としての道を捨て占い師としての道を歩んできたことを心のどこかで罪悪と感じていた”緑”は、そうして初めて、自身のこの世で果たすべき人事を成し遂げた。
そんな心持ちがしてならなかった。




end.

って。オチが、緑間!!??
珠葵が一番、びっくりしてます。


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