「なーなー名前」
「なに」
「今日の放課後デートしねぇ?」
昼休み特融の喧騒の中、私の前に座って弁当を広げている和成はにこにこと満面の笑みを浮かべて言った。部活は、と問うと今日は朝練だけ、と返された。もともと私は帰宅部だから基本的に放課後は暇だし、特別断る理由もないので二つ返事で了承する。すると和成はよっしゃ、と小さくガッツポーズをしてから手を合わせ、律儀にいただきますと言ってから弁当を食べ始めた。
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先生の話していることに特に耳を傾けず、窓の外を眺めたりしてぼーっとしていればあっという間に時間は過ぎて放課後になった。教科書やらノートを鞄に仕舞い終わると、タイミングよく和成が私の机のそばに来てじゃあ行こっか、と手を差し出した。その手に自分の手を重ねるときゅっと手を繋がれる。私より大きい和成の掌は少しひんやりしていて心地いい。手を繋いだまま和成と並んで歩く。授業が終わってすぐに学校を出たため、下校する人たちの中には私たちと同じように手を繋ぎ、並んで歩いているカップルが目に入る。そういえば、デートしないかと言われただけでどこに行くかは決めていなかったような気がする。
「ねえ、どこに行くの?」
「んー?いいとこ!」
いたずらっぽく笑う和成に内心ため息をつきながらも、迷いなく足を進める和成の後を着いていく。しばらく歩くと小洒落たお店にたどり着いた。中に入るとショーケースにずらりと並んだかわいらしいケーキが目に入る。
「ここ、イートインできるんだ。名前、どれがいい?」
たくさんのかわいらしいケーキの中からフルーツタルトが食べたい、と言えば和成は店員さんにケーキと紅茶を注文をして会計を済ます。自分の分だけでも払おうと財布を出すと俺がデートに誘ったんだからいーの、とやんわり断られた。せっかくなので和成の厚意に甘えることにする。ケーキと紅茶を受け取り席に向かう。フルーツタルトと紅茶を和成から受け取りありがと、と言えば和成は満足そうに笑った。
「いただきまっす」
「いただきます」
2人で手を合わせてからケーキを口に運ぶ。フルーツの酸味とクリームの甘さが絶妙でとても美味しい。思わず顔がほころばせると、和成がふ、と笑った。
「やーっと笑ったな」
「え?」
突然何を言い出すのかと和成を見れば、和成の掌が私の髪をわしゃわしゃと撫でた。
「あんま無理すんなよー?」
名前はすぐに溜めこむからな、そう言うと和成は髪を撫でていた手を引っ込めて、自分のケーキを口に運んだ。
バレてたのか、と内心舌を巻く。そういった類の話を私がしたがらないのを知っていたから、今日こうして私をデートに誘ってくれのだ。ありがとう、と言うのが少し照れくさくて心の中で和成にお礼を言う。
「和成」
「ん?」
「苺、ちょうだい」
和成のショートケーキに乗っている苺を強請れば、しょうがねーなー、なんて笑って苺を差し出してくれる。和成のそういうところが大好きだよ。差し出された苺を口に含む。美味い?という問いかけに頷く。咀嚼した苺は、とても甘かった。
ストレスを溜めこんでいた女の子と高尾の話
140730
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