暁家長編 | ナノ
4.














鮫「待っていました。さぁ後片付けですよ。」

『…………。』






って、さっそくスパルタ再開かいっ!!なに考えてんだこのドS……!!






『ちょ、ちょっと!洗い物くらい自分たちでやればぁ!?』

鮫「何を言っているんです?こんなところにいい人材がいるんですから、活用しない手はないでしょう。」

『はっ!さてはあんた、はじめからアタシが戻ってくると踏んで……!』

鮫「さぁ、とっとと始めて貰いましょうか雑用さん。」

『くあ〜も〜〜!!!』






何よこいつ!ほんっっとに情のカケラも粒子もない!

ええい、もうやったれアタシ!そんで目にもの見せてやる!こんじょだ根性!
























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しかしその後も、まぁ続く続く雑用家事のオンパレード。

食べた食器の洗い物にはじまり、床掃除、洗濯、風呂掃除。



夜中の12時を回る頃にはもうクタクタだった。






『も、駄目……一歩も動けない……。』

鮫「ウジ虫にしてはよくやったほうですね、感心です。さぁ、ここがあなたの部屋ですよ。」






ガチャリ。やっと心身ともに安らげると、誘われるままに部屋へと入れば。






……アタシはもう、それ以上踏み入れられずに絶句した。






鮫「まぁ訳あって、というより持ち主の性癖で、多少血生臭い部屋の仕様になってますけど。」






多少?多少、うん多少ね………いや、かなりである。






ていうかどこからツッコんだらいいの!?何か壁に死体みたいなの埋まってんだけど!!

その箇所だけ血の痕がジワァとにじみ出て、壁紙で隠しきれてないくらい盛り上がってるんですけど!!






『ちょ、ちょっと!もう少しまともな部屋ないの!?』

鮫「生憎あたなみたいな小汚ない娘に見合う部屋がなかったもので。」

『な……!とことん嫌味な奴!ふんっ、いいさ!えぇどうせアタシは排水溝がお似合いの女ですよーだ!』

鮫「おや、よくお分かりなようで。」

『へんっだ!』






いいさ、もうこの程度のイジメには慣れっこだ。

大丈夫、ベッドはあるし死体には目と鼻をつむればいいだけ。それじゃ死ぬわアタシ。でもこんじょだ根性!






……て、寝る前にまで何でこんな気合い入れなきゃなんないのよ!まったくぅ!






鮫「あぁそうそう。最後にサソリさんにお茶をお持ちしてください。」

『はい?』

鮫「あの方は今の時間書き物をなさるので、その時々にお茶汲みに行くんですよ。」






は……地獄だ。いや今も充分地獄だが更に地獄だ。

あのサソリさん相手にお茶汲みだなんて……。






鮫「わかりましたね?毎晩かかさずですよ。」

『…………。』

鮫「では私はこれにておいとまします。くれぐれもサボることのないように。」

『……ってアレ?あんたはここに住んでないの?』

鮫「私は雇われている身ですから、言わばここは職場です。お給金もろくに頂けない最悪な職場ですが。」






ふーん。あんたも一応労働者として、いろいろ苦労してるんだ……。






鮫「ですがこれからは、楽しい職場になりそうです。ククク……!」






こ〜の〜や〜ろ〜う〜!!

だがアタシが言い返すより先に、鬼姑(おにしゅうとめ)は例の変なポーズのあと水をまとうように消えた。






……てちょっと!まといきれてないし何か床がビショ濡れなんですけど!!絶対わざとだろあの鮫野郎〜!!
























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『は〜ぁ……。』






何て気の重くなる話だろう。

それでもやらないわけにはいかない。でなければ更なる報復が待っているのだから。






コンコン、

『し、失礼しますー……。』






アタシがそろ〜りと部屋に入れば確かに、サソリさんは床テーブルで書き物をしていた。






『お、お茶を汲みにまいりました……。』

蠍「あぁ。」

『す、好きな茶葉は……』

蠍「ない。好きにしろ。」

『さ、さいでしか……。』






だが意外や意外、さっきまではとことん突っかかってきたというのに。

今の彼は寡黙そのものだ……そんなに大事な仕事なのだろうか。



アタシが多少気になって、その手元の達筆を覗き込むと。
























―――60代前後の見た目にしては、いやに手にしわ一つなく、透き通っていた。






『……サソリさんって、手綺麗なんですね。』






思わずアタシが感嘆すれば、今まで微動だにしなかったサソリさんがゆっくりとこちらを向く。

アタシがビクついている間にも、彼は正座するアタシに這い寄るように畳に手をついて。






……アタシが精一杯後ろのめりになるも……サソリさんの強面は、すぐ目の前。







蠍「……だったら何だ、小娘。」

『い…いや、何ともないけど……いいじゃないですか、せっかく褒めてあげたのに。』

蠍「褒めてあげただぁ?一丁前に上から物言いやがって。さっきの補食ショーも野ざらしにしとくんだったな。」

『はぁ!?何よ!!さっきまではちょっといい人かもって思ってたのに!!』

蠍「加えて、んなクソ不味い茶ぁ出しやがって。オレは熱すぎず冷めすぎず、すぐ飲める温度がいいんだよ。」

『じゃあその温度になるまで冷ませばいいでしょ!?勝手に!!』

蠍「オレは待つのが嫌いなんだ、ついでに待たせんのもな。その低脳な頭の引き出しにねじり込んどけ。」

『痛たたたい!!ホントにねじらないで何か出る何か出ちゃうー!!』
























シリアスかと思えば、結局コレかい!

(も〜!!明日になったらこんな家!出てってやるんだから!!)


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