三大フェチ2 [1/2]
今のサソリが、嫌いなわけじゃない。
奴のフェチを知って、その愛の標的を知って。
アタシはよりサソリを好きになれたし、それなりに満足もしている。
……ただ、それだけじゃ終われない気がした。
三大フェチ2---------------
口へのキスは、相手に対する「愛情」の現れだとか、よく言ったもんだ。
―「んふぅ……ねぇサソリ…あたしのものに、ならない…?」―
逆に手首へのキスは「欲望」だとか言うそうだが……オレにとっての口キスは、まさにそれ。
愛情表現の欠片もこもっちゃいねぇ。
―「サソリ、んっ…上手……ねぇ、もっと凄いことしてよ……」―
だからオレは好きな女相手に舌を絡めたことは無いし、そもそも好きになれる女なんて居やしなかった。
いままで“女”という生き物はオレにとって、性の捌け口でしかなかったから。
―『サソリ、今日から一緒に住もう?』―
nameに出会って、奴がオレの女になったとき……性の対象には見れなかった。
nameは、そんなつまらねぇ女じゃなかったからだ。
―『また付いてるよ、口紅……サソリの付き合いに、とやかく言うつもりはないけどさ。せめて彼女の前でくらい、ちゃんと落としなよね。』―
側に居て落ち着くだけじゃない。
オレのフェチと称した心臓、喉、脳……nameのそれらを征するとき。
―――それは即ち……nameの命を、握っている感覚。
『……ちょっと、あっ…!』
nameに唇を寄せるときも……その無防備にさらけ出された喉を、オレはどうとでも料理することができる。
吸いついてキスマークを残すことも、
噛みついて痛々しい歯形を残すことも、
―――その首の動脈を、かっ切ることも……可能。
『んっ、はぁ……また痕、付けたの…?』
オレが抱くフェチというのは、つまりそういうこと。
そのスリルがたまらなく快感で、狂おしいほど病み付きになる。
「…いつも通り、朝までには帰る。だから今日は先寝てろ。」
『…………。』
だが所詮オレは男、当然性欲は溜まる。
だから今まで通り女を抱くし、性の対象でしかない故にキスもする。
『……いってらっしゃい、サソリ。』
オレは満たされていた。満たされているはずだった。
あの日、nameにそれを気づかされるまでは―――……
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『サソリ。』
リビングのソファで、nameを股の間に座らせて。
背後からその首に腕を回していたオレは、奴のすぐ耳元で鼓膜を揺らす。
「早速事件の真犯人が的外れだからって、もうブー垂れてんのか?これでオレの指名した奴アタリだったら、明日の燃えるゴミはお前が出せよ。」
『やっぱり、口にキスはしないんだね。』
「何だよ、またその話かよ。毎度よく飽きねぇな……喉乾いた、そいつ取れ。」
『はいどーぞ。』
どちらのものでもないそのコップは、先ほどnameが飲んで半分以下にまで減らされていた。
オレは差し出されたまま、そこから伸びるストローに口をつけ。
喉を鳴らしながら、それを最後まで飲み干す。
「……っぷは。足りねぇ、おかわり。」
『自分で持ってきなさいよ、空っぽにしたのあんたなんだから。』
「馬鹿言え、テメーの飲んだぶんの方が多かっただろうが。」
『あーはいはい。わかったからこの手どけて、汲みに行けない。』
「で、口にキスしねぇから何なんだよ。」
『それココでぶり返す?』
nameが半ば呆れたように、背後のオレをチラ見するので。
オレはお仕置きとばかりに、その首を横から甘噛みしてやった。
『やっ……もう、いきなりはやめてっ。』
「好きなくせに。」
『それはあんたでしょ……ほんとに好きよね、首…。』
「こっちも好きだけどな。」
『んあっ…て、そこは違うでしょって…!』
オレが心臓より下の柔らかな乳房を鷲掴めば、nameは体をよじった。
その手に叩き落とされることを予期したオレは、そうされるより前にパッと手を放す。
『……!はあっ…、』
「別にテメーと乳くり合う気はねぇよ。そんな躍起になんなって。」
『っ……!!そん、な…こと……』
するとオレの予想に反して、不意に大人しくなってしまうname。
いつもなら『誰も躍起になんかなってないわよ!』とか言って突っかかるくせに。
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