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……え……?
「ごめんな、name……あの日お前を傷つけて、謝らないばっかで……お前のはじめてが誰だとか、オイラのプライドがどうとか、いちいちそんなことに執着して、嫉妬して……オイラの方がずっとガキだったんだよな、うん……。」
そう自覚したように呟く幼馴染みが、再びアタシへと視線を戻した。
それはアタシを許すでも、憐れみでも、憎しみでもない……ただアタシという一人の人間を認めてくれている目。
「そんなことより何が一番かって、これからのnameとどうしたいかだから。」
『……デイダラ……!』
「これから先どんなお前といれるか、一緒にどんなことが出来るか……そういうことに費やしたほうが、前に進める気がするしな、うん……。」
『っ……!!』
「これまでオイラがしてきたこと、nameが散々されたこと、もちろん無かったことにも忘れることも出来ないけどよ、うん……それでもオイラ、nameにはこれからもただ笑っててほしいから。」
そう言って、自らも優しい笑みを作ってみせるデイダラに。
アタシは涙でない別の感情が込み上げては、グッと胸が熱くなった。
……どうしてこんな人が、アタシの隣に居てくれるんだろう。
何でこんなに、アタシの欲しい言葉をくれるんだろう。
「それと……オイラずっと内心思ってるばっかで、ちゃんとお前に伝えたことなかったよな、うん。」
『……え……?』
すると何やら言い改まったデイダラ。
アタシは已然として横に座ったまま、お互いの距離はまだ随分空いてたけど。
ー「なぁname、違うんだ……ガキの戯言じゃないんだ……」ー
ー『うん…うん……』ー
ー「オイラ本当にお前が……今でもお前が……」ー
……その気持ちだけは、手に取るように分かったんだ。
「オイラやっぱり、nameが好きだ。」
『!!!』
「だから、これはnameさえよけりゃだけどよ、うん……オイラやっぱりあの約束がないと、居心地悪いってゆーか……」
そうして続けざまに何を言い出すのかと思えば。
その顔を斜め下にそらして顔を真っ赤にしたデイダラが、拗ねた子供のように口を尖らせていた。
「オイラやっぱり、nameとその……結婚しときたい…から……」
『ッ……!!』
アタシは心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらいのリアクションで、口からいろいろ飛び出さないように思わず両手で覆っていた。
久しぶりな、この感じ。心臓を鷲掴みにされたような。
その威力は、この距離からでも充分な破壊力だった。
嬉しい……でもやっぱり可愛い!!ぐはっ……!!
ガタガタがタンッ!!
「ヒューヒューデイダラ先ぱぁい!!おめでとうございまーっス!!」
「は……!?」
「いやぁめでたいっスねぇ……で。式のご予定はいつ頃っスか?」
「おい茶化してんじゃねぇぞトビ!!つーか旦那も出てったんじゃ……、」
「ずらかるとは言ったが聞き耳立てねぇとは言ってねぇ。」
「恥ずすぎんだろ!!羞恥プレイやめろマジで!!」
「で?既にハッピーエンドモードなんだが返事はどうしたよname。それ次第じゃ奈落のバッドエンドだぞ。」
そう言って、既に分かりきった答えを聞き正すみたいに聞いてくるサソリだったけど。
アタシはここで嬉しさにかまけて、簡単にそれを承諾しちゃいけないと思ってた。
またいつアタシがよそ見して、フラッとどこかへ行くとも限らないから……でも、もうそんな心配もないと思った。
だってアタシは気づいたんだ。
ー「nameちゃんはないの?僕に特別抱く感情って。」ー
アタシの恋愛脳的判断基準は、ときめきなんていう甘いものじゃなかったから。
ー「な……!!ちょ、name何して、」ー
ー『しーっ。』ー
あの日デイダラにキスしたり、心音確かめたりしたときの、アタシ自身の穏やかな鼓動。
速くなんてならなくて、むしろゆったりと遅くなって心地の良かった感情。
ーーーそれはデイダラにしか感じない、アタシの心の平穏。
アタシはデイダラに、芯まで溶けるくらいに心を許していたってこと……このときようやく気付けたんだ。
『〜〜〜……!!』
そんなアタシは抑えていた口元で、言葉にならない声が漏れ出して。
そうしてもう、感情溢れるままに大好きな幼馴染みに抱きついていた。
『もっっっちろんおーけーだよぉおお!!』
「ぐあ!!痛っ!痛いっつーの傷口開くって!!」
「いーなぁ先輩羨ましいぞぉ!このこのっ!」
「お前はただちょっかい出したいだけだろ!!つつくな痛ぇんだよマジで!!」
「その様子じゃ脳みその後遺症的心配はなさそうだな。違う意味でお花畑だが、まぁ大目に見てやる。」
「いや何で上から目線なんだよ旦那!?」
「ちょっとムカつくから。」
そうやってみんなで笑えてる以前の日常があることに、アタシはまた涙して。
何よりこうして幼馴染みといれる奇跡を、これからはもっと大事にしようと思ったんだ。
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そうして月日が経ち。
アタシはこうして厳かな場所で、大好きな人と歩いてる。
(もうこんな光景見られないって諦めてたこともあったのに……。)
今だってお互いがお互いに付けてしまった傷痕を肌の表面にたずさえて、ここにいる。
アタシは感慨深くなって、長いドレスの裾を踏みそうになって、だけどそれに気づいた幼馴染みがいち早くアタシの体を支えてくれた。
「おい馬鹿、こんなときによそ見すんなよ。」
『……うん。もうよそ見なんてしないよ。』
「嘘こけ。」
しないよ。よそ見なんて出来ないくらい、アタシはあなたが大好きだから。
だからあなたの側に居続けること、あなたに一生を捧げること。
『……誓います。』
そうして一通りを終えた後に鳴らされた祝福のベルが、アタシの心からの誓いに釘を刺してくれていた。
これがアタシの馴れ初め馬鹿なアタシを愛してくれた、大好きな人との昔話。
2020/5/31
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最後まで御愛読いただきありがとうございます。管理人Bです。
今回はかの有名な作品「NARUTO」よりキャラクターを数名借りて話を進めさせていただきましたが、自分の描くキャラクターたちは原作とは全くの別人です。
この度も原作者様に頭を下げながら文章化させていただきました。
本当に岸本先生「NARUTO」を生み出してくださりありがとうございます。
さて、今回管理人がこの作品を通して書きたかったのは「好き同士でもうまくいかない恋」です。
今回の長編ヒロインもなかなか癖のある性格だったので大変でした(笑)
性について無知で、絵本に出てくるような結婚しか頭になくて、おバカさんで……だから恋愛も迷走して、何度も間違えて、思い詰めてしまいました。
でも実際バカでどうしようもない選択をしてしまったヒロインですが、世の中の恋愛もそんなもんじゃないかなと思います。
何が正解なのかも分からないでフラれたり、裏切られたりすること、もしくは自分から間違った選択をしてしまうこともあるでしょう。
それでも成長していることだけは確かだと思います。
そうやって間違ったからこそ、正しいものが見えてくることもある。
そういう教訓として、このお話を読んでいただければなと思います。
それでもはじめはサイくんとの肉体関係にするつもりはありませんでした。
でもヒロインが死のうと思うに至るその衝動的理由が欲しかったのと、デイダラに一番罪悪感を感じる行為は何かを考えたときに、そのようなルートを取らざるを得ませんでした。
表紙のラブコメ表記とは程遠い内容となってしまったこと、ここにてお詫び致します。申し訳ございませんでした。
では最後に。完結に至るまで何年も放置してしまったこと、本当に心からお詫び申し上げます。
このコロナで生じた休みの2ヶ月間、管理人の執筆意欲が切れないように拍手やメッセージくださった読者様、ありがとうございました。
それでは、ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。
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