デイダラ長編 | ナノ
33.














「はぁ?nameにフラれたぁ?」






夏休み明け初日。

クラスの前で久々に再会したサソリの旦那が、唖然とした様子でオイラを見る。






「嘘だろ……」

「……なんか意外だな。旦那がそこまでショック受けるなんてよ、うん。」

「いや、何だかんだあのデイダラっ子なnameのことだし、早々によりを戻すんじゃねぇかとタカくくってたんだが……あ、そんでコレ土産な。」

「ってガチで砂じゃねぇかよ!!」

「ジョーダン。ほらよ現地のチョコ、中身溶けてたらどんまい。」

「はぁ……いいよな旦那は。向こうじゃ楽しんできたんだろ?うん。」

「まぁな。海外のお姉様方とヤることヤってたわ。」

「人が大変なときに何ひと夏のアバンチュール満喫してんだよ!!」






すっかり日焼けした旦那は、あっちで購入したであろう菓子類を朝からむさぼっている。

すると今度は視界の奥からドタドタと例の騒がしい奴が。






「お〜〜っはよーございまぁすデイダラ先ぱぁい!!」

「朝からうるせぇなお前はよ、うん。」

「あ、サソリさんお土産っスか?あざーっす!」

「まだやるなんて一言も言ってねぇだろうが。おら、」

「とか言ってしれっとくれるサソリさん優し……って何スかコレ!?今おでこに貼ったの何スかコレぇ!??」

「現地のシール。テメーの飾りっ気ない仮面にでも貼っとけ。」

「えぇええ要らないっス〜!ボクもお菓子がいいっスよぉ〜!そんなに持ってるならお一つくらい、」

「それよりトビてめー、今年は夏休みの宿題どうしてたんだよ、うん。」






オイラはすっかりハワイアンと化したトビの仮面に話題をふる。

そうだ、確かコイツ去年はnameとオイラんとこに押しかけて宿題やってたはずだよな、うん……。






「……あ。今年はnameちゃんからお誘いなかったからすっかり忘れてたっス。」

「って馬鹿かお前!!宿題一つも手ぇつけてないとか!!うん!!」

「大丈夫っスよ!今年も仲良くnameちゃんと廊下に立たされるっスから、」

「nameの奴なら宿題終わらせてるぞ。」

「なにぃいいい!??」






想定外だったのか、旦那からの告白にトビの奴がこれまたあからさまにショックを受けている。

それもそのはず、nameはオイラを頼れない代わりに、あのサイとかいう奴に……、






「はぁあああ〜……」

「ど、どしたんスか先輩、そんな頭抱えちゃって。ってそれよりnameちゃんはどこっスかぁ!?」

「噂をすりゃあ来たぞ。」

「「!!」」






咄嗟にオイラとトビが同じ方向に首を向けると。

廊下の角を曲がって近づいてきたのは、紛れもなくあのnameで。






「nameちゅああん!!会いたかったよぉん!!」

「っ!馬鹿やめろ!!」






早速両手を広げて抱きつきに行こうとするトビの足を引っ掛けるオイラ。

おかげでトビの奴は、見事に顔面スライディングをかましていた。






ふぅ、危ねぇ……休み前のnameとは事情が違うんだ。

あのトビからのハグだろうが止めとくに越したことはねぇよな、うん。






「痛だだだだ!!ちょっと何するんスか先ぱぁい!僕の一ヶ月ぶりのnameちゃんとのハグが……!!」

『だ……大丈夫?トビくん…?』






開口一番にトビの奴を心配するname。

少し膝に手を付きトビの顔を覗き込むと、次にはオイラと旦那を交互に見た。






「おはようデイダラ……サソリも、久しぶりっ。」

「は……はよ…」

「よぉおひさ、ほらよ土産やる。」

『わぁ、ありがとう…!大事に食べるね?』

「ってサソリさぁん!やっぱりお菓子あげるだけあるんじゃないスかぁ!」






なんてトビの奴が文句垂れているが、オイラはそれどころじゃない。






nameはマスクをつけていなかった。

オイラがつけた傷痕は、この距離からでも充分目視できた。






ー『あのね……今日はお別れを言いに来たの。』ー






……何よりあの日以来、すっかり見ることのなくなった幼馴染みに。

このときオイラは、距離感を感じたんだ。






ー『ありがとうデイダラ……アタシこれからもずっと、デイダラのこと大好きだよ……!』ー






これまでオイラにベタベタしていたnameとは違い。

どこか、他人のモノにとってすり替えられたような……そんな空気をまとっている気さえしたんだ。






キーンコーンカーンコーン

『あ、予鈴のチャイムだ。ほらみんな早く教室入ろ?』






そう言って促されたことで、我に返る。

だがそれを言った張本人は、くるりとオイラたちに背を向けてしまう。






「お……おいnameどこいくんだよ、もうホームルーム始まるぞ、うん。」

『え……あぁうん!トイレ行ってくるだけだから、みんなは先に教室入ってて?』






一度振り返ったnameは、にへらと曖昧な笑みを浮かべていた。

そうしてオイラがその違和感を引き止めるより先に、nameはタタタと廊下を駆けて行ってしまう。






「何かnameちゃん雰囲気変わったっスねぇ。急に大人っぽくなったというか。ってかあの顔の傷どうしたんスかねぇ。」

「…………。」






外見だけじゃない、トビの奴でもその変化を感じるくらいだ。

けどオイラはさっきのnameの作り笑いみたいな顔が、このときやけに引っかかってた。






(……戻ってきたら聞いてみるか。別に結婚の約束がなくなったからって、幼馴染みであることに変わりはないもんな、うん。)






そう思い直して教室へと入っていくオイラだった、けど。

その後のホームルームが始まっても、nameの奴は戻ってこなかった。
























予感、的中

それどころかこの日以来、nameの奴はめっきりクラスに姿を見せなくなってしまった。


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