涙色のバレンタイン
…今日はバレンタイン。年に数度、思いを口にする日の一つだ。
チョコを渡したい相手は、もうここには居ない。

「…出来た。」

恋する気持ちを未だ捨てられない事は認める。
だから、こうして気持ちだけでもと、始めた事が有る。

「…これでよし、っと。」

彼と一緒に撮った写真の前には丁寧にラッピングしたチョコを置いた。
彼を模したぬいぐるみには、ハートのマスコットを縫って添えた。

「こんな事してるなんて、他の人には言えないけれど…大切な人を思うのは、悪い事じゃないよね…」

思いを口にする日を決めているのは、毎日こんな事をしているとミッションに差し障るから。

「…結局チョコ、あなたに直接渡せなかったよね…私にもっと勇気があったなら、良かったのに…」

もう後悔しても遅いが、悔やんでも悔やみきれない。

「私…ニールの事、やっぱり好きなんだって思う… こんな事までしちゃうんだから…」

ぽろぽろと涙がこぼれて、枕を濡らしていた。
こういう日は、どうしても泣いてしまう。

「私が、マイスターとしての役目を終えても…またこうしてチョコを作り続けちゃうんだろうな…」

自分は甘い物はあまり好きではない筈なのに、何やっているんだろう…と、思ってしまう。

「だから、見守っていて…くれる…?」

少し身勝手かもしれないけれど、こういう風に思わなければ私は動けなくなってしまうような気がしていたから。

「わがままで、ごめんね… でも…あなたのことばかりで、他の人に興味を抱けなくなっちゃったの…」

あなたは、新しい恋をするべきだと言うだろう。
でも、思いが強くなりすぎて出来る訳がなくなってしまっている。

…その夜、彼が夢に出て来た。

『…スピカ、チョコありがとうな。』
『ニール…』

同じ包みを抱えた、彼が居た。

『お返し、してあげないといけないけれど…できないからなぁ…』
『…お、お返しなんて… 私が、好きでやっていることだから…』
『…せっかくこんなに素敵なものくれたのに、幸せを祈る事しか出来ないなんて勿体ないくらいだよ。』

髪を撫でながら、そう言っていた。

『うん…ありがとう…』
『ん、どういたしまして。 にこにこ笑っていてくれよ、お前の笑顔はとびきり可愛いんだからさ。』

…目が覚めると何だか虚しいが、それでも嬉しいと考えてしまう私が居た。
彼の言う通り笑えるような気がしていたのだから、頑張っていこうという気持ちになったバレンタインだった。


(行ってきます、ニール。)

思いを笑顔の力に変える為に。

13.02.12
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -