ウィスキー・ボンボンに酔わされて
今日はトレミーの女子クルーでチョコレートを作っている。

「スピカは、誰にあげるの?」
「本命チョコをあげる相手が居るんですよね!?」
「ん?えぇ…」

ミレイナの言う所謂本命チョコはティエリアへ。

「…出来た。」

包装もきっちりした。
明日、ちゃんと渡せるといいな…と思って部屋に戻ったその次の日…

「(さ、渡しに行こう…)」

が…この後、トレミーを騒がせる一大事になるとは私には予想すらしていなかった…

「ティエリア、これ…」
「ん…バレンタインのチョコレートか?」
「うん…」
「ありがとう、スピカ…」

嬉しそうに包装を解いて、チョコレートを食べた。
が、彼の表情が一瞬歪んだ。

「ど、どうしたの…?」

おそるおそる聞いた。しかし、彼が返したのは予想外の返答だった…

「これ…酒を入れたのか?」
「…え?」

私が作ったチョコレートに酒を入れた覚えは無い。
一口食べたら…

「う……」

チョコレートとは違う妙な味がする。
しかし、思い当たる節はあった。

「これ… ミレイナとリンダさんが作ったやつ…かも…」

妙な感覚がして、まともに歩けない。

「もうらめ…変な、感じ…」
「スピカ…酒に弱いにも程があるだろう…」

…僕は、取り違えたチョコを返そうとイアンを探しに行くことにした。
ミレイナとリンダが一緒に作ったという事は、イアン宛だろうという考えだ。

「あ、アーデさん!」
「どうした?」
「パパ、何だか不機嫌なんですぅ…」

…どうやら、ミレイナが僕を好きなのかと誤解してしまったらしい。

ミレイナとともにイアンを探しに行ってみると…

「パパ…」

ミレイナが話しかけても、彼は拗ねたままだった。
リンダに話を聞いてみる事にした。

「あの人はミレイナの事になるとああなっちゃうのよ…ミレイナも恋するお年頃なんだから…ねぇ?」

彼女まで誤解しているようだ。そもそも、僕がスピカと交際している事を公言していないせいもあるが。

「というか…これが本来イアン宛のチョコなのだが…」
「あら…ミレイナったら、あなた宛のと間違えちゃったのね…」

厳密に言えばミレイナが取り違えたスピカから僕へのチョコだ。
リンダからチョコを渡されて、一言言われた。

「応援してるわよ、ティエリア。」

…とてつもない誤解をされたような気がする。

「はぁ…とてつもない受難だった…」

その後、イアンからの誤解はしばらく解けないままだった上…

「スピカ、酔いは… …!?」

酒に酔って寝ていた彼女の体中にリボンを巻かれていた。
だが、僕が受難を受けた原因が彼女にもあるのでしばらくこのままにしておこう。

今度こそ、と彼女が作ったチョコを一口食べた。

「甘いっ…」

…そのチョコは、予想に反してとてつもなく甘かった。
僕は甘いのは苦手だ。だから、後の楽しみに取っておこう…

その数時間後…

「…! 私ったら今まで…って、動けない…」

目が覚めて、見渡したら部屋に居た。しかし、身体をリボンで縛られて動けない。

「ようやく目を覚ましたか…」
「頭痛いし…記憶が…」

枕元に居た彼は呆れていた。

「覚えていないのか?君がチョコレートを取り違えたせいで僕は散々な目に有った上に、目を離したら君は全身リボンを巻かれているし…僕は今日一日振り回されっぱなしだった。」
「チョコを取り違えた事は謝る…でも、待って…リボン巻かれたのは私のせいじゃ…」
「…いや、僕は理性を保てるか危うかった。」
「理性…?」

口が滑った、と言ったような苦い顔をしていた。
それから、思考していた隙に彼が私の上に覆い被さった。リボンを解いてくれる様子は全く無い。

「今日一日振り回された仕返し…もとい、お仕置きと言った方が正しいか?」
「え…待って…?」

…彼の意地悪な表情を見上げていたら、キスをされた。

(この期に及んでまだ君は抵抗する気か…?観念して僕に貰われたらどうだ?)
(そ、それ…どういう意味…!?)
(…そのままの意味に決まっているだろう。)

甘い罠が仕掛けられているのなら、チョコレートごと君を貰ってしまえ。

13.02.11

[Mileina&Feldt side -リボンの行方-]
(リンダとティエリアが話している間…)

「あーして、こーして…うん、これでよしですぅ!」

(その後…)

「ねえ、ミレイナ…チョコ包む時に使ったリボン知らない?」
「ん〜?知らないですぅ〜…」
「そう…ならいいかな…」

「うふふふぅ〜…♪」
「どうしたの…?」
「何でもないですぅ〜♪」

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