バレンタイン・キスは大人の味
私は女子クルー達と一緒にチョコレートを作っていた。

「(ライルは大人だから、ビターめな方が良いかしら…)」

なんて短絡的な事を思いつつ。

「誰に渡すんです?」
「え…?」
「そんなに張り切って作るんですからぁ、やっぱり居るんですよねぇ〜?」
「…そ、それは…そうだけど…」

マイスターや男子クルーのみんなの分をミレイナとスメラギさんとフェルトで分担して作っている。
だが、私は彼に渡す分を作っている。

『おっ、お嬢様たちはチョコ作ってるのか…』
『そのようだな…』

刹那とロックオンの声がしていた。

「匂いで分かっちゃうものね。」
「なら尚更、美味しいものをつくらなくちゃ…」

そうと決まれば、とやる気が出た。

「すごいですぅ、とっても器用ですぅ…!」

やる気が出たせいか、運ぶのに苦労しそうなものが出来た。

「ど、どうやって運ぼう…?」
「いっそのこと、箱に入れるよりもお皿にそのまま…でもいいんじゃない?」
「…そう、だね…あ、いっその事食堂に呼んじゃうのも…」
「それなら後片付けしておかなくちゃ、ね。」

急いで後片付けをして、食堂のテーブルには私作のチョコレートケーキとラッピングされたそれぞれへのチョコが並んでいた。

「じゃあ、頑張って♪」
「え、あ…」

本当に唐突で焦っている。気持ちを落ち着かせる為に何とかしようと考えていたら…

「…!」

チョコプレートを用意したのに書くのをすっかり忘れていたことに気付いた。
慌てて、[Happy Valentine for Lyle]と書いて、ケーキに添えておいた。

「あ…ロックオン… あのね…食堂に来て欲しいの…」

…照れくさいが、彼を呼び出した。

「よう、どうしたんだアリエス?いきなりこんな所に…」
「ごめんね、唐突に… これね、作ったのはいいんだけど…運んだら崩れちゃいそうで…」
「へぇ、これお前が? 結構器用なんだな〜…」

切り分けるのが勿体ないくらいだ、なんて言いつつも切り分けられたケーキに嬉しそうにしていた。
私は酒にはめっぽう弱い上に未成年なので、味見はスメラギさんに頼んでいた。そのせいか、私自身はそのケーキの味見をしていないことになるので自信が無い。

「美味い…!」
「…! 良かった…お酒、入れたから自分では味見出来なくて不安だったから…」
「ん?ああ、まだ未成年だもんな… ありがとな、アリエス。」

そう言って、髪を撫でられた。照れくさくなって、俯いていた。

「…可愛いやつ。」

…そう言って笑みながらケーキを食べている彼を見つめていた。
気付けば既に、皿の上は空になっていた。

「ごちそうさん。」
「ふふ、お粗末様。」
「…何で笑ってるんだよ。」
「だって… 嬉しそうに食べてたから…つい…」

と、笑いを堪えていたら…

「…!」

テーブルを挟んでの彼お得意の早撃ちを喰らってしまった。

「おー、顔真っ赤…可愛いー…」
「う……」

少しお酒を入れすぎたのか、妙にくらくらする。
部屋に戻るにも一苦労になりそうで、介抱されながら彼の部屋に連れて行かれた。

「…もしかしてお前、酒弱い?」
「えー…そんなこと… ある、かも…?」
「マジで酔ってる…?」

その後の事は一切覚えていないが、意識がはっきりした時には彼の腕に抱かれてベッドの上に居たのだった…

(あれ……?)
(…お前、一緒に寝たいとかそんな事言ってたぞ?(本当は、一緒に居たいって言ってたけどよ…))

あまりの可愛さに、たった一文字違いの嘘を吐く。

13.02.09
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