真っ白な気持ちに蒼い花を
俺は、バレンタインのお返しをして回っていた。

「わぁっ、ありがとうございますぅ!」
「ありがとう、刹那。」

最後は彼女に渡すだけ…なのだが…

「(艦内に居ない…?)」
「アリエスならさっき、新しい機体のテストに出たばかりだぞ? 機動性をテストしたいとか言っていたから少し掛かるだろうな…」
「そうか…」

彼女は最近ミッション以外にも機体の開発に携わるようにもなった。
寝る間も惜しむようになっている故か、こういったすれ違いが起きてしまっている。

「イアン、彼女が戻ってきたら、すぐ俺の所に来いと伝えて欲しい…」

「あいつが仕事熱心になりすぎてドックに入り浸るのを直すチャンスだ。 頑張れよ刹那、お前さんにかかっとるからな。」

彼女の勤勉さが災いし、過労で何度も倒れている。それにはイアンも困っているようだ。

「アリエスもせっかくいい男に巡り会えたんだから、女らしく恋にも積極的になればなぁ…」

…それは俺のことを遠回しに指していた。

「ついでに儂から言わせてもらうとだな…もう少し恋人らしいことをしてやったほうがいいと思うぞ。」

今夜は何が何でも隣に居させよう。とにかく、それだけだった。

その夜…

「刹那、居る…?」
「ああ…」

部屋に招き入れた直後、俺の体は彼女の方に自然と引き寄せられた。

「せ…刹那…!?」
「…ずっと、待っていた…」

バレンタインの時以来顔は合わせるものの、寝る間も惜しんで開発に明け暮れてばかりで寂しかったのかもしれない。

「すまない、スピカ…」

俺が謝ったのは、イアンに指摘された事を考えてみたら俺が彼女にろくに恋人らしい事をしてあげられていなかった事に気付いたからだ。

「俺はお前が好きだという気持ちばかりで、行動に表せていなかった… 開発に明け暮れる姿を見て、いつの間にか、距離を置くようになってしまって…」
「ごめん…なさい…」
「何故謝る…」
「だって、私ってば…機体の開発ばかりで、あなたのことを疎かにして…」

彼女が悲しい表情をして謝る姿を見て、何故か涙が頬を伝った。
彼女の言葉の中に俺への思いがあったからなのかもしれない。

「せつ…な…? 泣いてる…?」
「気に、するな…」

これ以上言及されないように、そっと引き寄せてキスをした。

「ん…」

思い出して、水色に青のリボンを掛けた包みを渡した。

「これ…」
「ホワイトデー、だからな…」

…贈り物は、キャンディと蒼い花の髪留め。
彼女は花が好きだと気付いたから、というのが選んだ理由だ。

「綺麗… ありがとう、刹那…」

髪を結っていたリボンを解き、結い直した髪に髪留めを付けた。

「どう…?」
「ああ、よく似合ってる。」

照れる彼女の視線に合わせていたら、頬に温かな感触。

「…!」
「刹那…好き…」

…彼女が俺に抱き付いてくる。

「あのね、刹那…私はもう、あなただけって心に決めているの… あなたは…どうかしら…?」

彼女の無垢で愚直な質問。

「愚問だな…俺も、スピカだけと心に決めている…」

気付けば、この言葉を言うべきだというところまで来ていた。

「スピカ…愛している…」
「うん、私も…」

…今日は、蒼い花が咲いた日。

忘れられない日になりそうだ…と、また唇を重ねたのだった。

(あの黄色い花も好きだけれど、この蒼い花も好きだな…)

真っ白な髪に咲いた蒼い花。それは心にも、この愛にも咲く。

13.03.09

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