悪戯の代償は

私は、あなたが眠っている所を見つめていた。
本当は私も休まなければならない所だが、知的好奇心が湧いてしまったのだ。


「(やっぱり整った顔つきだな…)」


ふと目に入ったのは、縁の無い眼鏡。


「ちょっとだけ…」


好奇心が収まらない。


何故だかは分からない。いけないと思っている筈なのに。


気付けば私は眼帯を外して、あなたの眼鏡を掛けてみていたが…何だか違和感がする。
でもレンズ越しにあなたを見ると、あなたと同じような見方をしているように感じていた。


「(ティエリアも、私をこうして見つめているのかな。)」


そんな風に考えていたその時…


「スピカ…」

「…え?」


…後ろを振り向いたら、あなたが起きていた。


「ティエリア、起きてたの…?」

「…君がそこに居るのだから寝付ける訳がない。」


邪魔だったのか、と思って眼鏡を外して部屋を出ようとした。
だが、あなたはそれを阻止するかのように手首を掴んだ。


「待ってくれ。」

「…え…?」

「…その距離がもどかしいだけだ。」


その言葉の意味が分からずに首を傾げてしまった。


「…分からないのか?」

「う、うん…」


やれやれ、といった表情で私を見ている。


「…そんな所に居ないで、もっと近くに居て欲しかった。 たったそれだけの事だ。」

「ああ…そういうこと、だったんだ…」


見つめ合って、あなたが一言。


「眼鏡を掛けても似合うが…君の目はそのままで見つめていたい。」


そう言って眼鏡を外された。

それを置くと、あなたは捕まえるように抱き寄せてきた。


「さて…代償は、君の身で払ってもらおう。」


ニヤリと笑いながら耳元で囁いていた。

「うぅぅ…」

「…どうした?君の知的好奇心の代償だろう?」


指摘されればもうそうとしか言いようが無い。

気が付けば、あなたに鹵獲されたまま眠りについていたのだった…


(もう軽い気持ちで悪戯なんてしない…)

たった一さじの悪戯の、甘い代償。

12.10.29


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