僕の目先には君が見える。
でも、それだけでは足りない。
「なあに?ティエリア。」
手を伸ばして、前髪を撫でる。
「ひゃうっ…」
ああ、この感触だ。
これがあってこそ、君が隣にいる事を教えてくれる。
「ん…」
頬に指先をなぞらせる。そして、軽くつつく。
「柔らかいな…」
「ど、どうしたの…?」
頬を紅くしながら、困った表情で僕に尋ねる。
「…顔を紅くしながらそんな表情をしたところで、可愛いだけだ。」
「はうっ…ティエリアの意地悪…」
そんな事を言われたら、仕掛けたくなる。
膝の上に乗せて、後ろから抱きしめる。
「ひゃっ?!」
こんな風に驚いたり照れたりする姿は僕しか見た事が無い。
そう自負したくなるのは、愚かだろうか?
「…やっぱり、安定するな。」
君の頭に顎を乗せて、背中を密着させる。
「ずるい…」
そう言っておいて君は僕の腕に手を乗せている。
口ではずるいと言っておいて甘える君の方がずるいじゃないか。
「(でも…君が甘えてくれるなら…)」
今日も君を感じながら、君の誰も知らない一面を僕だけが独り占めしている。
目先に、指先に。
(これも、恋人の特権というやつだろうな。)
視覚と触覚があって初めて本当に君を感じられる。
12.10.24