読書している彼の背中にくっ付いてスケッチをしていた。
「…いつになったら、何を書いているのか教えてくれるんだ?」
目が合う度に言われる。
「それは出来てからのお楽しみだって。」
そう、出来てからのお楽しみだ。
「…今日の君はいじわるだな。」
「…そう見える?」
「…冗談だ。」
暫くして、背中に重みを感じた、整った寝息が聞こえてくる。
「(あ…寝てる…)」
ようやく絵が出来上がったというのに。
「仕方ないなぁ…」
膝枕してあげることにした。
彼の寝顔に、ついときめいてしまった、
「(髪さらさら…それに…)」
寝顔はすごく穏やか。
それは何の警戒もしていないようだった。
「ん…」
…彼が少し唸った。
「…ティエリア、」
「…!」
声をかけたら目覚めた。
「寝ていたのか…」
「うん。」
「途中からあまりにも心地よくなったと思ったら…」
彼は起き上がると、抱き寄せてきた。
そのついでに、スケッチブックを手に取った。
「そういう事か…」
「あ…」
…そう、私が描いていたのは彼だった。
「本当に君らしいな。」
彼はふっと不器用ながらに笑っていた。
「…ありがとう。」
そう言って、キスをしてきた。
…秋は深まって来た筈なのに、その時だけ気持ちは未だに残暑のままだった。
Over the back
(はわわ、アーデさん達ちゅーしてるですぅ!)
(なるほどねぇ、ティエリアってそういう…)
照れくささで真夏の暑さが一瞬だけ戻って来た気がした。
(展示期間:12.5.10-12.10.14)