Happy room children
組織のアイルランド支部に滞在し始めてから数週間が経った。
何故かスピカも一緒だが、彼女自身もフォーリン・エンジェル作戦で負傷していたし、ミス・スメラギが組織を抜けてとてつもなく傷心していたのもあれば、
一緒にいれば無茶出来ないだろうからという理由で俺のお目付け役にもなるしというイアンのおやっさんからの意見で、ヴェーダの定めていた制約上では組織の支部に滞在しているので問題はなかった。

スピカは学問に興味を抱いて勉強もよくしているけれど、普段は部屋に篭りっぱなしだ。
どうやら、まだ人をとてつもなく警戒する癖が治っていないようだ。
もしくは自分だけの領域というものを初めて得たので、それに浮かれているのだろう。

ある日、手芸屋に行きたいと言った時は驚いた。

「いったい何を作るんだ?」
「これ…」

タブレットで資料として表示したものは、モビールと言って、部屋に飾るものだという。

「あー、これな…ガキの頃、音が鳴るやつがあったな…赤ん坊の頃のエイミーの玩具だけどさ。」

これの為に、今は資料を探しているところだという。普通に言えば内気、悪く言えば暗いと思われるかもしれないが、
可愛らしい趣味に目覚めて良かったと思う反面、大掛かりなことをやりたいと言い出したら…と、不安にもなる。

「…確かにこの部屋、少し寂しいもんな…少しくらい、飾ったっていいもんな…」

あまり物を欲しがったりしないせいか殺風景にも見えるし、無欲すぎて逆に大丈夫なのかと疑ってしまう。

「星とか好きなのか?」

資料を覗き見て、ふと聞いてみた。

「…うん。 天文学は資料を見てるだけで楽しくなる…だって、空だって宇宙だって、いろんな色になるのよ? ヴェーダで調べたら、きっと綺麗な写真が見られるかもしれないけど…掌握されてるから…」

俺はそんな景色見飽きたはずなのに、こいつが言うと頷きたくなる。
何故ならばミッションで地上に降りられないときは『青い空が見たい』としょんぼりしていたのを知っているから。

「可愛いものができるといいな。」
「うんっ…」

でも、飾りつけるのもいいけれど、遊ぶものも置いたほうがよさそうだ。
資料に関しては端末を使えばどうにでもなるが、温かみのあるものが欲しいところだ。

「そうだ…部屋が寂しいから、ぬいぐるみでも置くか?今度熊とか兎とか、スピカの好きなのを…」
「…それは子供っぽすぎる… でも…」
「ん?」
「…ハロちゃんや、ニールのなら…作る…」

本で手芸を覚えてから、やってみたいと言っていたことを思い出した。
…どうやら、尚更手芸屋に連れて行く必要があるようだ。

「しっかし何でハロと俺なんだよ…ていうか作る前提かよ…」
「すき…だから…」

好き、とはいいつつも、LikeなのかLoveなのか分かってないようだ。

「…でもね、部屋にあなたがいたら…私、寂しくないよ…?」

そうじゃねぇだろ…と思いつつ、はにかみながらそれを言うのは愛の告白か?とも思ってしまう。
だが絶対本人に自覚なんてないだろう。こいつは、あまりにも無垢すぎる。
だからこそ、嫌いになんてなれない。だから、頭を撫でてごまかす。
でも、こいつからしたら嬉しいと解釈されてしまうんだろうな。子供に好かれること自体は、悪くはないが。

「しかし…不思議だよな、ほんと…殺伐とした時代のはずなのに、どこまでも無垢でさ…良い意味で子供っぽいって言うか…」
「…??」
「あーもう、とにかくお前さんには負けるよ…」

可愛く飾るのは部屋だけではもったいない気がしてきてしまったから、幸せな部屋の小さな主も可愛らしく飾ってやろう。
彼女の未来は、こうして彩られていくような気がしている。

その反面俺は、彼女に手始めにどこでも付けられるように可愛いリボンでもあげてみようかと考えてみたりするあたり、既に絆されてしまっているのだろう。
年下、もとい子供にそんなことを感じる俺は、正気かどうか少し疑い始めながらも考えていた。
Happy room children

(あー…だとしたら俺は、いつから狂ってんだ…)
(…?)

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[ex:visiter's side]
ふとアイルランド支部を訪ねた。
療養中の二人に会いに行こうと思ったからだ。

「よう、元気そうだな…っ!!?」

二人は一緒に本を読んでいたらしい。
ロックオンが置いたのかスピカ本人が増やしたのかわからないが、本やぬいぐるみが増えていた。
ベッド脇には手製のぬいぐるみまで置いてある。

「…ロックオン、ひとつ聞いていいか?」
「ああ、これか? 部屋が寂しいだろうって事で…」
「(そうじゃねぇ…)」

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ニールとスピカのお部屋模様替え計画。
本やぬいぐるみ類はモレノ先生や兄さんが揃えたと考えて下さい。
スピカは15歳、まだまだ恋に気付かぬお年頃です。

14.05.26


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