どうしようもなく寂しいから、ぬいぐるみを作った。
抱き心地を考慮して、大きめに。
寝る時も一緒。あなたには、内緒にしておこう。
「(というか、こんなの誰にも言えない…)」
…少し可愛く作りすぎてしまっただろうか。
でも、恋仲になるまではツンツンしていたのだから今の彼にはどこか可愛げがあるのかもしれない。
「そう考えるのは、変かな…」
ふわふわな頬にキスをして、横になった。
「(ティエリア…)」
時々あなたの事を夢に見て泣きそうになってしまうこともあるけれど、今はそっと我慢を。
「もう、朝か…」
今私は新たなガンダムの開発を手伝いながら、カスタムフラッグを使ってミッションを遂行するマイスター達をサポートしている。
「…今日も、頑張ろう。」
部屋を出る時は自室の棚にぬいぐるみを隠しておく。
こんな子供っぽい趣味、知られたら何と言われるか分からないから。
「あ、レティクールさん!」
「ん…ミレイナ…」
食堂で、ミレイナがドラマを見ていた。
「レティクールさんはドラマみたいな恋って憧れます?」
「いや…それはないかな…」
私にはちゃんと恋人が居るし、今の恋に満足はしている。
…でも、一人にされたのだから再会できた時にはたくさん泣いて彼を困らせてしまおう。
我ながら珍しくそんな小悪魔的な事を考えてしまうのは、あなたのせい。
それから一人の夜を幾度も過ごしてきた。日数にすれば、既に年単位になっていた。
「ティエリア…」
そろそろ涙をこらえるのも辛くなってきたそんな時…
「…僕を呼んだか?」
あなたの声が聞こえた気がした。
寂しすぎて、思い出しただけだと思っていた。
でも、こちらに歩み寄ってくる足音がする。
「…スピカ、こっちを向いてくれないか?」
ぬいぐるみを抱えているのを忘れて、声の方に振り向いた。
「ティエリア…?」
私を見つめたと思ったら、肩を抱かれた。
実に2年ぶりに見る彼の顔に、涙が溢れてしまった。
「あの頃より、君は美しくなったな…大人になったからか…」
彼の温もりが伝わってくる。
「う… うぅ…」
「どうした…?」
…彼の視線は、私の抱えているぬいぐるみにあった。
「そうか…寂しかったのか… すまない…」
気付けば腕に抱かれていた。
「君は僕を想っていてくれた…それ故に、辛い思いもさせてしまった… だから、君の気が済むまで抱きしめていよう…」
ぬいぐるみを枕元に置いて、彼に抱きついた。
やっぱり、抱きしめるなら彼の方が優しくて温かい。
「やっぱり…僕の方が良いだろう…」
何故だか分からないけれど、声を上げて泣いてしまった。
こんなに泣いたのは、ロックオンが死んでしまった時以来だろう。
「…気が済んだか?」
「うん… ありがとう、ティエリア…」
見つめ合ったら、キスをされた。
それから、ぬいぐるみを見て言った。
「…君のぬいぐるみは無いのか?」
…抱きしめる為に作ったものだから、自分のぬいぐるみを作る予定すら無かった。
「そうか…ぬいぐるみであっても、君とは寄り添いあっていたいのだが…」
そんな事を言われたのは、予想外だ。
「今度作るから…ね…?」
「ありがとう…」
そう言ってもう一度、柔らかいキスをした。
やわらかなハグをして
(…しかし、これは少し可愛すぎはしないか?)
(…私から見たあなたは、可愛げあると思うけれどな…)
(っ…! 君のほうが可愛いに決まっている…)
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(おまけ『やわらかな二人』)
その後、彼女の机の上を見たらちゃんと二人分のぬいぐるみが置いてあった。
「ティエリア…どうかな?」
「可愛いな…」
さり気なくぬいぐるみを隣同士に寄り添わせておいた。
それから…
「…!」
ぬいぐるみだけでは寂しいだろう?そう言って彼女を抱きしめる。
ああ、君だ。僕だけの君だ。そう実感しながらも、寂しい思いをさせていることを詫びた。
「いつかは、寂しい思いをしなくてすむようにしなければ…」
ぬいぐるみに愛を込めるほど可愛らしい君だから、心は脆い。
柔らかな愛で抱きしめる必要がある。
「君の寂しい顔を見ると、悲しくなってしまうんだ…」
「ティエリア、」
耳元で君が何かを言おうとした。
聞き逃さないように、抱き寄せる。
「…あなたも、寂しがり屋さんなのね。」
「…君ほどではない。」
そろそろ、そんな暗い顔をしないで笑ってくれ。耳元でそう囁く。
「…そんなこと、耳元で言われたら照れる…」
「…君は本当に可愛いな。」
…照れる顔も可愛いけれど、やっぱり笑顔が一番可愛いから。
(だから、そういうこと言わないで…恥ずかしいから…!)
(それなら、寂しい思いをさせた詫びに君がそういう事を言えなくなるまで可愛がってやろう。)
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ティエリアさんデレシリーズ。一応劇場版の時系列ネタです。
通信でお話出来ても、触れられない寂しさより辛いものは無かった結果です。
ちなみにぬいぐるみですが、(,,σ_σ,,)←こんな感じの顔を想像して下さい。
13.12.30