メディックにも手遅れな恋
久々にシェリリンに会って、トレミーに帰還した。

「あら、おかえりなさい。ドクターモレノ。」
「ああ、ただいま。ミス・スメラギ。」

もう一人の養子のスピカも、地上滞在から帰投しているらしい。
最近はちょっと動向が怪しいが…

「最近のスピカは、何かを隠しているように見える…」
「…女の子なんだから、少しくらい秘密はあるわよ。」

だが、その秘密が白いものだとは限らない。
養父故に、心配になる。

「そうねぇ…例えば、彼氏が居るとか?」
「私でも朴念仁だと思うあの子に彼氏が、か?」

…とか考えたが、ありえそうだ。
『考えてることが口に出てるわよ』と、突っ込まれてつい口を抑えた。

「とはいえ、心配だな…組織の外ではとてつもなく世間知らずだからな…」

と言っていた矢先に…

「スピカ、スピカ。 ロックンドコ?ロックンドコ?」
「え…?一緒に探しに行こうか…?」

ハロを拾い上げた彼女が居た。

「やあ、スピカ。」
「あ…モレノさん… そっか、今日帰投だったんだっけ…」
「体調は変わりないな?」
「うん…」

相変わらず内気で、元気かどうか分かりづらい返事だが、私にはわかっている。

「ところで、聞いてもいいか?」
「え…?」
「君には好みの異性が居るのか?」
「…?! な、なに…?唐突に…?」

直球過ぎたようだ。逆に動揺させてしまった。

「おーい、ハロー…お、スピカが持ってたのか。」
「ロックン、サガシタ。サガシタ。」
「探してた所で会ったから…一緒に探しに行こうと思ってたの…」
「そうかそうか、ありがとな。」

頭を撫でられている。彼女は嬉しそうだ。

「あら、仲良しさんね。」

もしかして、スピカの彼氏とは…

「…スピカ… そ、その、だな…歳の差というのは意識しているのか…?」
「え…?」

彼女にはそんなことすら意識していないだろう。
もとい、何故歳の差がいけないことすら分かっていないだろう。

「どうしたの…?唐突に…」

ちょっと隠れてハロを抱えながら、片手でニールの服の裾を掴んでいる。
確信した。だが、ちょっと待て…

「スピカ、本気か!?彼は歳も離れているし、何と言うか倫理的にも…!」

20歳と30歳。彼女は成人したが10歳も年の差がある。
まだ幼い頃から二人は一緒だったが、流石に世間からは倫理観を疑われる。

…だが、彼女の目は吊り上がっている。

「…そうか、君は本気なのか…わかっているが、どうしても父性がな…」

ならば、私は彼女の気持ちに水を差すつもりはない。
だが、問題は…

「ニール、君はどうなんだ?」
「ああ、実はな…その、何つーか…」

…こういう場面では渋ると思った、が…

「…俺の方が折れたんだよ…」

ぽつりと言ったそれは、私としては充分爆弾発言だった。
…彼女は身に付けた優しさで無自覚に彼の心をスナイプしてしまったようだ。

「意外ね…でも、悪くないような…」
「二人が良くても、世間が…」

と、言いかけた所で…

「…上には上が居るの…忘れてない…?」
「はっ…!!」

あっさり論破されてしまった。
そうだ、イアンは25歳差…だがそんなことよりも不安なことがある。

「…恥を忍んで聞くが、既成事実は無いだろうな?」
「え…? "キセイジジツ"?」
「スピカにそんな言葉分かるわけないじゃない…」

…彼女はその言葉の意味すら知らなかった。
彼にもこっそり聞いたが「ある訳無いだろ」と返された。
婚前交渉で既成事実が出来る方が、さらに問題になる可能性がある。

「ああ…それならいいんだ…」

彼女はとても怪訝な顔で私を見ている。

「結局、何だったんだろう…?」
「…ドクターはお前さんのことが心配だったんだよ。」
「ん…そうなのかな…」
「そういうこと。」

ハロを抱えながらまだ怪訝な表情を崩さない彼女の頭を撫でながら宥めている。
若干質問を躊躇ったが、医師としてせざるを得なかった。

「あれだと、メディックにも手遅れねぇ…」

…仲良しだが、何だか私としては腑に落ちない。
いくら成人したとはいえ、彼女に一抹の不安を覚えたのだった。

(…何だか飲みたい気分だ…)
(あら、付き合うわよ?)

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[ex:親心と腐れ縁と]

その数時間後…

彼女に恋人ができたことで成長は感じたが、相手が相手なので少々難儀していた夜…

「それにしても、スピカも成長したわねぇ…純情ってやつだわ。」
「だが相手がな…」
「それを突っ込むのは野暮ってものよ。」

「よう、珍しいな。」

…その後ろには、論破された原因。

「二人が呑むってことは何かあったんだろ?」
「スピカに、メディックにも手遅れな恋ってやつがねぇ…」
「おうおう、あの朴念仁にか…?相手は一体どこのどいつだろうな…」

イアンはにやにやしているが、私は言いたいことがあった。
既に酔いが回っていたので、言いたいことを勢いに任せることにした。

「何をどうしたらあんな年上の相手が出来るんだ!?」
「!?」
「というかイアン、もしかしてスピカに変なことを吹き込んだんじゃないか!?」
「なんでそういう考えになるんだよ!?」
「歳の差を指摘されて上には上がいると返したんだぞ!」
「おまっ、それ八つ当たりじゃねぇか?!」
「でも事実だろうが!」

「あらあら…これは収集付かないわねぇ…」

喧嘩の流れで、飲み会は自然とお開きになっていたのだった。

(ニール…食堂が騒がしいね。)
(まあ、元気だよなぁ… 0時回ってるのは置いといてな…俺達は寝るか。)

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はい、クルーギャグ夢第二弾はモレノ先生編です。
これも、フォロワーさんとモレノ先生生存ifの話をした結果出来たネタです。
自分が考える中で先生が言いそうな酷い台詞を選りすぐって出してます。
オチは酔っ払って大人げなくイアンと喧嘩してる先生ですがね。こんなのシェリリンやフェルトには見せられませんね。
ちなみに主の相手がわかった瞬間と主が本気だとわかった瞬間を顔文字で言うならΣ(゚д゚)!?→(´・ω・)…みたいな感じで。

因みに…時系列的には[Area]や[バスタブに沈めた内緒話]の後です。
おまけの主とニールは展望室で話をしていて部屋に戻る最中でした。

13.11.24



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