真の脅威は隣にあり!?
西暦2313年。第二のツインドライブ機のパイロットとして、モビルスーツ開発に携わるようになってはや一年。一段落して、休憩のひととき。

「あら、アリエスも休憩?」
「ええ…GNドライブがもう一基届かなければ、テストも出来ないから…」
「それはそうねぇ…ダブルオー以来の新型ツインドライブ機ですものね。」

と、技術職らしいことを話した後…

「そういえば武力介入が始まってもう7年になるのね…ミレイナも大きくなったし、アリエスももうすぐ成人するものね。」
「思えば、時間なんて飛ぶように過ぎていくのを感じるようになった…」
「それは大人になった証拠よ、アリエス。 そうそう…」

この後リンダさんが突然言い出したことに、私は動揺してしまった。

「あなたにこんな事を話すのもあれだけど…」
「はあ…」
「二人目、考えようかと思って。」
「!!??」

リンダさんの歳なら、まだまだ問題無いだろう。
もしそうなれば、仕事を少し離れることになりそうだが。

「…でも、いざとなったら言い出せなくて…ふふふ。」

…私にはあまりよく分からないが、養子である以上は関係はある。
だが、唐突に言われると私も驚いてしまう。

「まあ、いつかあなたも考えるようになるとは思うけれどね。」
「うん…そうかもしれない…」
「どうやって伝えるかよね… ミレイナに弟か妹を…なんて、今更言いづらいわよねぇ…」

…まあ、ミレイナももうすぐ16歳。義姉に5歳上の私とフェルトが居るが、今から弟や妹となると歳が少々離れすぎているような気もする。

「あ…! 迫ってみるのも悪くないわねぇ…最近ご無沙汰だったから…」

…何がご無沙汰だったかなんて、恥ずかしくて聞ける筈がない。
逸らかすためにコーヒーを一口啜った。

「ストッキングをガーターに変えてみるとか…でも、あのスカートじゃ見えづらいわよね…」
「(あ、メール…)」

メールに関しては、ライルからのものだった。
文章に動揺して、コーヒーが気管に入ってむせてしまった。

「あらあら、大丈夫…?」
「っ…大丈夫…」

普段通りのミッション報告の文章の後に、[そっちはどうだ? あまりラボに入り浸りになってると、俺とベッドに入り浸りになる羽目になるぜ?]という一文が入れば流石に動揺する。
[GNドライブを接続してテストしなくちゃいけないからまだ掛かる。 それと、あなたが唐突にそんなメールを送るから飲んでいたコーヒーが気管に入ってむせた。]と返しておいた。

「アリエス、今回の話は内緒にしておいて?」
「えぇ…了解。」

…私にも衝撃を受けるであろう発言はあるが、伏せておこう。バレるととてつもなく厄介な相手がいる。

その数週間後…
ロールアウトする機体とそれに搭載するもう一機のハロを搬入しに、トレミーに帰投した。

「おお、おかえり。 どうだ?新しい機体は。」
「挙動も操縦性も、宇宙空間での武装のテストも問題ないわ。あとはトランザムのテストが残っているだけだから、実戦投入は間近と言えばそうね…」
「ついに第二のツインドライブ機か…これで刹那の負担が少しでも減ればいいのだがな…」

先にトレミーに帰投していたイアンさんとも数週間ぶりに会えた。リンダさんはやけに嬉しそうだ。
そして、私の目の前でついにアクションを起こした。

「ふふっ… ところで…久しぶりに水入らずで、どうかしら?」
「リンダっ!!? お、おい、ちょっと待て!」

あら、といった感じで眺めていたら、後ろから強引な引力に引っ張られた。

「よう、久しぶりだなお姫様?」
「ひゃっ…!どうしたの…?」
「…今夜時間取れるだろうな?」

不意打ちを食らいながら、耳元で囁かれた。
ラボに入り浸りだった私に対して拗ねていたライルは、私から離れようとしてくれない。
後ろから髪を撫でたり、耳元で色々囁いたり…数週間ぶりだったせいもあって、妙に積極的だ。

「…着いたばかりだから、トランザムテストをしたらちょっと休みたいかな…」
「オーライ、じゃあ覚悟しとけ。」

『ママですぅ〜! あ、あれ…!?』
『み、ミレイナっ!?』

捕まったら最後、と念頭に置いていたら外が騒がしかった。
キスを交わしている時、気にしていたら…

「あ、こらっ…キスの最中に惚けるなって…」
「ひゃっ…!」

と、軽くお仕置き代わりに首筋にもキスをされた。
その後外に出たら、ミレイナと鉢合わせた。

「あ、アリエスさんっ!」
「な、何…!?」
「ママに何か変わったことは無かったですか!?」
「え?いや…」
「そうですよねぇ…」

ミレイナが焦っている。それは久しぶりに会った自分の母親が唐突に父親に積極的にアプローチをかけれていれば驚くだろう。
私に聞いたのは、ラボで一番顔を合わせる機会が多かったからだろう。

「…何があったっていうんだ?」
「それが…ママが妙にパパに積極的…というか…? ストッキングをガーターベルトに変えたり、とか…スカートの丈が変わったような…気がするですぅ。」

そのリンダさんの本来の考えを言える訳がない。
どう説明しろというのだろうか…それ以前に口止めされている時点で言えないけれど。

「おーい、アリエスー…? また例のあれか…」
「例のあれ、です?」
「こいつ、最近目が金色になってぼーっとしてんだ…」

思考していた末に、ついぼーっとしてしまった。

「ごめん…」
「もうちっと制御出来るようになるといいんだけどな… 自分でも把握出来てないんだっけか…」
「うん…」
「よしよし… だからってあまり考え込むなよ?悪循環だし、お前まで刹那みたいになられても困るしな。」

彼に心配されてしまった横でミレイナに『ラブラブですぅ』と茶化されていた所に…

「お、おい、アリエス…!」
「え…?」
「リンダに何か吹き込まなかったか!?」
「いや…」

今度はイアンさんからは逆に吹き込んだのかと疑われた。
自ら弁解をしようとしたら、ライルが横から『こいつにそんな知識有る訳無いだろ』と突っ込みを入れていた。あまりにも正論すぎて悔しいが。

「ワシは変なことした覚えは無いんだが…」

スメラギさんにどう思うか聞いてみると『恥ずかしくて言える訳がない』と言っていて、私の機体のトランザムテストが行われるまでの間しばらくイアンさんは首を傾げていたままだった。

…私がライルとお揃いのリングを付けているという秘密がバレずにほっとしてしまっていたのは、この場では秘密だ。



(どうしてこうなった…!)

(あんな事…言えるはずがない…! 言えるはずが…!)

――――――――――――――――――――

[after:翌朝の話]
トランザムテストを終えた後の昨晩は案の定ライルに捕まり、この間のメールの通りにベッドに入り浸りになる羽目になった。
喉が掠れ気味で冷たい水が欲しかったので、食堂に寄ることにした。

「アリエス、アリエス。」
「…?」

抱えていたハロに呼ばれてみれば、目の前には渋い顔をして腰に手を当てているイアンさんが居た。

「どうしたの…!?」
「ああ…ちっとばかし腰をやられてな…」
「大丈夫…?医務室、行く…?」
「そうだな、ちっと湿布が要るな…おお、そうだ。ミレイナには言わんでおいてくれよ…」
「りょ、了解…」

…リンダさん、言っていたことを本当に実行したんだ。そう悟るのはあまりにも容易だった。

(…ところでお前さん、声が掠れてるぞ。風邪でも引いたか?)
(聞かないで…)

――――――――――――――――――――――

はい、フォロワーさんとの会話で思いついたリンイアネタです。
この作品のメインは主にリンダさんが打ち明けるところですが、それだけではあまりにも尺が短すぎるので、いろいろ足してイアンさんには慌ててもらいました。
ライルがセクハラ気味なのは彼女がラボに入り浸りで拗ねてるからです。
因みに指輪に関してはSSLM-Type W-のライル夢に出てきたあのクラダリングです。右手中指に正位置で填まってます。

13.11.09





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