Infinite
(※[Dream Landscape and see the wanderer]の前日談です。先に読んでからこちらを読んで頂く事を推奨します。)

アリオスがアロウズのMSと戦闘中にレーダーからロストし、マイスター全員で捜索する事になった。

…久しぶりに地上を歩く。

ここはとても綺麗な場所だ。夜になっていてもわかる。

こんな場所に居ると、ふと考えてしまう。

「………」

…この世界は、とてつもなく生きづらい。

だから手探りで、私自身が欲するやり方で生きていく方法を見つけなければならない。

昔聞いた、自分だけの合言葉は"心"の奥底に、自分の世界は"自分"の奥底に。

未だにその言葉の意味はわからない。

「(…あの鳥、なんて鳥だろう?)」

ふと目に入った鳥。その姿を目に焼き付ける前にその鳥は飛んでいってしまった。
枝を細い脚で蹴り上げて、高く飛んでいった。

「(私もあんな風に、自由に羽ばたけたらな…)」

ふとため息をついたら、刹那の姿が見えた。

「アリエス…?」
「あ…少し、考え事…」

…彼には、わかっていたみたいだ。

「…私がもし、この先別の道を歩むようになるとしたら、どんな未来を歩んでいるだろうとか… そんな事を考えていた。」

殆ど、戦いの事ばかりで生きてきた。故に、なかなか想像がつかない。

「…人は常に、準備なんて出来ずに時を過ごしている。その中で目指す未来を思い描いていくものではないのか?」
「目指す未来を、思い描く…」

さっき飛んでいった鳥のように、地を蹴り上げて高く飛ぶ。
そして、思いっきり空へ羽ばたく…そんな風な図を何故か思い浮かべた。

「…でもヒントが全く無いから、難しいね。」

ヒントも無く、予想も全く出来ない中で、探していかなければならない。
どこに有るのかもわからない。もしかすると、そんなものは無いかもしれない。

「未来の自分は、気付かない所にある。近くて、自分の背後にあるかもしれない…それは、俺にも分からない。」
「…その言葉、覚えておくよ。」

その言葉は、心に刻んでおかなければならない言葉のような気がしていたから。

「ありがとう、刹那… いつか、自分が目指す未来を思い描いてみる…」

だが今は、恒久和平を目指す為に戦わなくてはならない。
その為に今は時間を無駄には出来ないし、心に余裕もない。

「ああ…お前には出来る。自分を信じろ。信じる気持ちが有れば大丈夫だ。 今すぐには出来なくても、心の準備をして、ちゃんと笑えるようになってからでもいい。」

…彼は、私の心に積み上げていたものを簡単に崩してしまった。
それは、昔の彼とは思えないくらい優しい言葉だった。

「じっくり考えればいい…人生にやり直しは効かないからな。」

彼はそう言ってふっと笑った。

滅多に笑わない彼が笑った。これは紛れも無い真実だった。

「…早くアレルヤを探し出そう。 またアロウズに襲撃される可能性もある。」
「了解。」

その後は何事も無く、アレルヤの捜索を再開していた――

…だが、私はずっと考えていた。

今までこの組織に居て、たくさんの思い出が出来た。
組織の一員として戦う日々は辛い事がたくさんあった。
でもその反面、たくさん知った事も、嬉しい事もあった。

それらはみな忘れられないくらいに特別な日々で、色とりどりで。
忘れたくなくて、写真を撮ったのに絵にまで残して。
水彩色鉛筆をたくさん買って、呆れられたこともあった。

真実はいつも真新しくて、全ての瞬間がとても新鮮で…故に忘れたくなくなる。
それを追い求めるが故なのかもしれないが、いつしか夢想していた。

この世界は3世紀以上前とはずっと環境は変わり果て、
イオリアが言っていたように未だ人は戦争を好み、一つになれていない。
それでも、まだ美しい場所が在る。

世界にある美しい場所。その場所が、本当に有るのか。
絵やホログラフのように、仮想の場所ではないことをこの目で見つめたい。

今はまだ、それを叶えるのは難しい。でもいつか、叶えたい。

私は、空を見上げながら決意する。

空は無限に広がっている。それなら、未来へ繋がる道は無限にあるはずだ。

Infinite
(あなたは出来ると言ってくれた。だからまずは、自分を信じなくちゃ。)

2nd第7話のアリオスとアヘッドが不時着した島での話です。タイトルは私が音楽ゲームで好きな曲からです。とってもさわやかな曲なのでオススメ。
ちなみに時系列ですが2nd7話→TVシリーズ完結→空と大地のまじわるところ([Dream Landscape and see the wanderer]の時系列)に繋がります。

12.12.07


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