彼女が酔ってふらついている。
酒にはかなり弱いっていうのに無理してパブに付き合った結果がこれだ。
「おーい、スピカ…?大丈夫か?」
「らいじょうぶ…」
…無理しなくて良かったんだぞ、と諭しながら家路を歩いていた。
「というか、どんだけ弱いんだ…」
たった一杯で既に酔っていた。いや、一口で酔ってた気がする。
レモネードにしておけと言っておけば良かった。
「(…でも、そこが可愛いんだけどよ。)」
部屋に戻ってみれば、彼女はすぐにベッドに倒れ込んでいた。
しかも、愛用のトレンチコートを着たまま。
「ライルぅ…」
「どうした?」
「暑い…」
何を言い出すかと思ったら、こんな真冬に暑さを訴え出した。
「ちょっと待て、早まるな。」
彼女は重い身体を起こして窓に手を掛けたが、真冬の夜に窓を開けられたら俺が寒い。
「ほら、レモネード。飲むだろ?」
「ありがと…」
…こんな時にはお気に入りのレモネードを。
「つくづく思うんだけどよ、レモネードが好きで射撃が上手いって…レモネード・ジョーかよ…」
…レモネード・ジョーは、旧時代の西部劇映画だ。
いつだったか忘れたがテレビで偶然見たもので、何故か覚えていた。
「ん…ひんやりしてて…おいしい…」
…でも、そんな事を抜きにしても気に入りのレモネードを飲んでいる姿は可愛い。
「スピカ…」
「んぅ…?」
酒に酔って頭がぼーっとしている隙に…
「…!」
…俺の得意な早撃ち。
「にゃ…」
ついでに紅くなった頬にも。
「ライル…ずるい… 私、も…」
レモネードのグラスを置いたと思ったら、彼女が迫って来た。
「っ…!?」
目を瞑ってキスをしているのが目に入って動揺してしまった。
…忘れていた。こいつは、酔うと何しでかすか分からないんだった。
「おいおい…積極的だな、キュートな子猫ちゃん?」
可愛いから、もう一度。
「うー…」
照れながら俺の腕に収まっている。
しばらく見つめていたら、「あまり見ないでよ」と言っていたが。
「俺が居ない時に他の奴の前で酒飲むなよ?」
そう言いつつ、額にキスをしておいた。
ほろ酔いレモネード・ガール
(…酔うと可愛い事やらかしてくれるのは嬉しいけれど、他の男には見せて欲しくない。)
――――――――――――――――――――――――
翌朝…
「う…んん…」
彼女は少し唸りながら起きた。
「おー、やっと起きた。」
起き上がって辺りを見た彼女が動揺していた。
「あれ…? 私、何でシャツ一枚なの…!?」
…本人は本気で覚えていない模様だ。
まぁ、俺はその誘惑を逆手に取って堪能させてもらったが…
「さあ、何でだろうな?」
そんな事よりその格好じゃ風邪引くだろ、とにやにやしながらはぐらかしておいた。
「…頭痛い。」
「わかったわかった、今水持って来てやるから。」
――――――――――――――――――――――――
はい、大人になった彼女とライルのお話です。お酒に酔ったあとはいちゃいちゃ。つーかこれヤッちゃってますよね。
酒に酔うと妙に積極的になったり感情が出たりなど制御不能なところがあります。そして翌朝忘れます。
レモネードに関してはアイルランドでいうところの白レモネードです。
筆者は酸っぱさを楽しみたいので冷たいソーダで、蜂蜜はあんまり好きじゃないので入ってない方が良いです。
ちなみにライルの突っ込みに出て来たレモネード・ジョーは西部劇のパロディ映画。
西部劇と言われるとアメリカのイメージですが、この映画はチェコの映画。
レモネードを愛し、アルコールを憎む西部の一匹狼なガンマンのジョーが主人公の1964年の映画です。
00の時代になっても旧時代の映画を放送する局が有ってもいいんじゃないか、的なノリでテレビで見たという描写にしました。
彼女に当てはめると、酒に激弱でレモネードを好む狙撃手ですね。
12.12.07