10月31日はハロウィンらしい。
「ハロウィンか…俺は興味が無い…」
…そう、神の存在を否定する俺には宗教的行事には興味が無い。
「でもよ、あいつに渡してきたらどうよ？これ。」
かぼちゃを象ったバケツに、菓子が詰まっている。
「女の子はだいたい甘いもの好きだからなぁ〜…」
「…そうなのか？」
…俺は、彼女にこれを渡さなくてはならない。
何故だかは分からないが、そんな気がしてきた。
…明日はハロウィンだ。そのせいかミレイナがはしゃいでる。
「ハロウィン、オカシ。オカシ。」
「私には、ちょっと子供っぽいかな…」
…ハロまではしゃいじゃってる。ハロはお菓子、食べられないのに。
その翌日…
「"トリック・オア・トリート"… やっぱり子供っぽいかな…」
ミレイナにも、今朝言われたのでマシュマロとキャンディを渡しておいた。
こういう子供っぽい行事は、ミレイナの方が似合う。
私はそういう子供っぽい事は言わない事にしている…マイスターとしての矜持があるから。
「…アリエス、」
「…ん、どうしたの？」
刹那だ。ハロウィンに興味なさそうだし、別の用事かと思っていた。
「こ、これ……」
無理矢理菓子の入ったバケツを私に手渡してきた。
「え、ちょっ、刹那…！？」
「…ロックオンに、この日は好きな異性に菓子をあげると良いと聞いたから…」
「え…？ あ、ありがとう…」
彼は照れながら前髪を撫でると、足早に去っていってしまった。
…だが、思い返してみれば何かおかしい。
「…ねえ、アニエル。私、"トリック・オア・トリート"って言ってないよね？」
『言ってないわね。』
「そう、だよね…」
『そうね。でももっと重大なツッコミどころがあるでしょ。』
…重大？何がだろうか？
「…刹那の奴、ハロウィンをバレンタインとかのような行事と勘違いしてるんじゃないか？」
…イアンさんに指摘されて初めて気付いた。
「あっはっはっ…刹那の奴、何をどうしたらああいう風に曲解するかな…」
影で見ていたロックオンが腹を抱えながら笑っていた。
私には意味が分からず、つい聞いてしまった。
「え？俺はあくまで女の子はだいたいお菓子好きだからな〜…って言っただけだ。」
『ロッ君ったら、変な事吹き込んで…っていうか、気付かないあんたもあんたよ。』
「うぅ…」
相棒からの指摘に関しては、唐突であたふたしていたのだからしょうがない。
…でも、思い返してみれば彼はちゃんと私の事を意識していてくれたようだ。
「(…後でお礼しなくちゃ。)」
その後…
「ね、刹那。さっきはありがとう…」
「あ、ああ…」
落ち着いた所で、二人きりになってお菓子を食べつつ話した。
「私、自分からこんなにお菓子を食べる機会なんて滅多に無いから…ちょっと貴重だな。」
「そうなのか…」
「…うん。でも、誰かから聞いたんだけど、お菓子は分け合って食べた方が良いんだって。」
「…何故だ？」
「こうして分け合って食べた方が、美味しさが増すんだって。」
だからあなたも、なんてクッキーを差し出した。彼はそれを照れくさそうにしながら食べた。
「アリエス…」
お返しに差し出されたのは、ふわふわなマシュマロ。
「…何だか、照れちゃうね。」
「ああ…」
…刹那がお菓子を食べる所なんて、私以外見た事無いだろうな…
なんて自惚れながら彼を見つめていたら、唇が重なっていた。
かぼちゃに愛をこめて
(…甘いな。)
(…！)
『…刹那、お菓子をくれたのは嬉しいけれど、ハロウィンは好きな女の子にお菓子を渡す日じゃないよ。』
『…！ 違うのか…？』
…彼は、本当に勘違いをしていたようだ。
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刹那ってこの世界に神は居ないと公言しただけあって、宗教が絡む行事には興味なさそうとか思いつつ。
お菓子をあげる日である事は知っていたけれど、ライルのせいで曲解してこうなりました的な。
お菓子を分け合って食べると〜の部分は某変身ヒロインアニメの映画を思い出しながら。
12.10.22