部屋で僕が読みかけだった本を読む君。
「ねぇ…ティエリア。イデアって何?」
時々だが、言葉の意味を聞かれる。
「…実在する事物に内包される、その事物たる永遠不変の本質及び心理のことだ。」
…難しいよ、と一言呟いた。
何故なら、僕が読んでいたのは哲学書だったからだ。
そっと、ページをめくっていた君の右手に僕の手を重ねる。
「…この表現は君には難しかったか。イデアは、それぞれの存在が「何であるか」ということに比較して、「まさにそれであるところのそのもの」を意味する。」
「「まさにそれであるところのそのもの」…」
「目の前に、目に見える形には無くとも、定義された存在があるという事だ。」
「…じゃあ、ティエリアもそうなの?」
永遠不変という意味では僕もそれに当てはまる。
「…ある意味合っている。」
…僕はイノベイター。永遠不変の存在。
君は人間。有限の生命しか持たず、時が経てば老いて、やがては消えていく。
「…どうしたの?」
「…"イデア"であることは、決して良いことばかりではないということを考えていた。」
…そう考えると哀しくなる。
「…私は生きられる限り貴方の側に居る。離れている時も、想うことは出来る。」
「スピカ…」
「…世界ではこの先何があるかわからないけど、二人であるがままに生きられたら幸せな気がする。」
重ねた手を、今度は握った。
「…あるがまま、か。」
君の純真さも、変わらないでいて欲しい。
「…そう思うなら、二人で最上のイデアを見つけよう。」
「ふふ…ありがとう。」
そっとキスをして、その存在を確かなものにした。
『おーいティエリアー、仲良くしてる所アレだが、ブリーフィングの時間だぞー?』
ドア越しにロックオンの声が聞こえた。
「しまった…!すまない、行ってくる。」
「うん、待ってる。」
…君の存在は、まさに最愛のイデア。
愛おしくて…乱暴に扱えば壊れてしまいそうな、柔らかな存在。
Idea
(詩的だねぇ、まったく。)
(…何のことだ?)
『最上のイデア 求めたものは 真実の中のあるがまま
最愛のイデア 見つめた先に 何があろうとも 君がままに』
come acrossシリーズのティエリアの『idea』より。この歌詞好きです。
ライルの言ってることがティエリアには分からなかった模様。
(*イデアについては一部独自解釈を入れているので、正確に知りたいならwikipediaのイデア論の記事を読んでみて下さい。)
12.02.18