10.快感と真実


「ぁ…っ…!」
「…大きいな、あんたのおっぱい。戦ってる時も、すげえ揺れてたしな…」

郁がヒロインを後ろから抱き締め、耳を舐めながら囁くように言う。
彼の両手は、ヒロインの乳房を服の上からこねるように揉み始めた。
優しく柔らかさを確かめる様に揉んだり、ぎゅっと掴んで握りしめたりした。

「っん…ぁ…っ」
「もう感じてんのか…?」

喘ぎ声を出すまいとヒロインは唇を噛みしめるが、胸の愛撫には弱い。
身体はどんどん、熱を帯び始めていた。

「違…っ」
「くく…ならもっと感じさせるまでだな…」

郁が、耳朶を優しく噛む。
両手は乳房を揉みながら、ヒロインの感じる場所を探す様に、指先を横に擦るように撫で始めた。

「ん…ふ…ぁ…っ」

乳首の場所を知らされたくなかった。
だが、郁の指先は硬く尖り存在を強調し始めている乳首を直ぐに見つけていた。
指先に当たる膨らみを捕らえると、服と一緒にそれを摘んだ。

「あんっ!」

小さく声を漏らしていたヒロインだが、初めて喘いでしまった。

「…良い声出せるじゃねえの」

郁の囁き声も、官能の渦となってヒロインの全身に鳥肌を立たせる。
捕らえた乳首を指の先で押さえながら、服の上から皺が出来るほど
荒々しく乳房を揉む郁。

「あんっ…ぁ、あんっ…」

一旦火が点いた快感は、もう戻る事は出来ない。
抵抗する体力もなく、赤龍の元へ帰る事も出来ない。
ヒロインは観念して、与えられる快感を受け入れた。

郁の両手が一旦乳房から離れると、服の裾を掴みするすると上へ上げる。
大きな乳房がぷるんっと現われ、服はヒロインの首から脱がされ上半身を全裸にされていた。
耳から項へと舌を這わせながらすかさず、郁はまた脇から手を入れるとヒロインの乳房を直に掴み、ゆっくりと優しくこねるように揉みだしていく。

「あんっ、あぁ…っ」
「ヒロイン…そうだ、俺の愛撫で喘げ…お前の身体はもう…この俺のものだからな…」

乳房を揉みながら、掌には先程の愛撫で硬く尖っている乳首が当たっていた。
郁の掌に乳首が当たり擦れる度、ヒロインは声を高くする。

「ん、ふ…あぁ…あっ…」
「乳首、触ってほしいのか…?」

項をツーっと舐めながら、囁く郁。

「んぁ…ん、触っ、…て…お願、い…」

快感に素直になっているヒロインは、郁に懇願して言った。

「っ…あんた、マジ可愛いな…」

素直に懇願し、反応するヒロイン、そして彼女の美しい身体と大きな乳房に、郁はいつしか心まで惹かれ始めていた。
郁はヒロインの懇願通り、両方の乳首を指先に当てると、上下左右へと弾き始める。

「ふぁあ…っ!」

待ち望む快感に、乳首から伝わる快感に、ヒロインは声と身体を震わせた。
硬く尖っている乳首は、郁の指に合わせ形を変えていく。
弾くのをやめ、人差し指で乳首を乳輪に戻すように強く押しながら、乳頭の部分を擦っていく。

「あんっ…ふぁあ…」

そして、押すのをやめると乳首は直ぐに元の位置に戻り、ピンッとそそり立っていた。
その乳首の根元を人差し指と親指で摘んで、コリコリと捻る。

「あぁん…!や、ぁあ…」

なんとも言えない心地よさに、ヒロインは乳房を揺らせ喘ぐ。
その乳房を逃さないよう、郁の両手が掴み、ぐにゅぐにゅと揉みこんでいく。

「ふああ…あぁんっ」
「っ…ヒロイン…いやらしい声出しやがって…」

郁は、ヒロインの快感に喘ぐ声に我慢が効かなくなっていた。
彼女をするりと自分の方へ向かせると、そのまま唇を奪う。

「ふ、…ぅん…ん」
「…ヒロイン…あんたは俺の女だ…このおっぱいも…俺のものだぜ…」
「そう…よ…。だから…もう悪い事…しないで…」

キスを終え、ヒロインは郁を潤んだ瞳で見つめる。
郁の頬に、スッと赤みが走る。

「…ああ、二度と悪さはしねえ。あんたが俺の女でいるならな…あんな野郎との約束どうでもいいぜ…」

気になる単語を郁は発したが、ヒロインはそれ以上考えられなかった。
郁がするりと顔を下ろし、ヒロインの左の乳首を唇で捕らえていたからだ。

「ぁあ…っ!」

跳ねるヒロインの腰。
捕らえた乳首を、唇に挟み上へとくいっと引っ張る。
唇から離すと、乳首は元の位置に戻りそそり立つ。
それを今度は口内に含み、ちゅうちゅうと音を立てて吸い始める。

「あぁんっ!やぁ…あん」

ヒロインは、郁の頭を抱え後ろへと首を逸らす。
首を逸らした事で突き出た乳首を吸い続けながら、右の乳房はこねるように円を描いて揉む。

「ふぁあ…ああ…っ」

そして、乳首の根元を人差し指と親指で摘みコリコリと捻り、上へと引っ張る。

「あぁんっ、ふぁあ…!」

両方の乳首の刺激に、ヒロインは悦びの声を上げる。
左の乳首をちゅぱっと引き抜くと、唾液で濡れた乳首が光って存在を強調していた。
郁は、今度は右へと舌を這わせ、指で捏ねくり回した乳首を今度は熱い舌で根元に当てると、乳輪に当てるように倒す。
そのままくるりと乳首を一回り転がし離すと、再びピンッと立つ。
それに舌先を当て、上下に弾く。

「はぁあんっ!」

唾液で濡れた左の乳首を、掌に当てながら乳房を捏ねていく。
そして、指先で乳頭に触れ左右に弾くように勢いよく転がす。

「あぁん!やぁあん、イい…っん」

郁の堪能な乳首の愛撫に、ヒロインの脚の間はヒクヒクし、蜜を溢れさせていた。

「ヒロイン…脚開けよ…」

乳首を舐め上げながら、余っている右手を太ももに這わせ、脚を開かせていく。
そこに触れてほしいヒロインは、簡単に脚を開かせていた。
下着の上からでもそこは濡れているのが分かり、郁は直ぐにそれを膝下まで下げてしまう。
直に露わになったそこは、蜜で濡れヒクヒクとなっている。
指を這わし、蜜溢れる入り口をなぞると、いとも簡単に郁の指を受け入れていく。

「あぁあ…」
「ヒロイン…俺の指を飲み込んでいくぜ…そんなに欲しかったのか…?」
「あぁう…ん、欲し…い…」

郁に素直に応じるヒロイン。
勇者として選ばれたヒロインの魅力なのか、郁はどんどん彼女にのめり込んでいた。

「っ…あんたって女は…マジ可愛いぜ…っ」

出し入れする指を引き抜くと、蜜がとろりと太ももを伝っていく。

「…立ってられるかヒロイン」
「え…うん…ひゃあっ…!」

乳首の愛撫が止んだと思ったら、郁は脚の間に顔を埋め、蜜を舐め始めていた。

「あぁんっ、郁…ふぁぁ…」
「ん…ふっ…ヒロイン…」

脚がガクガクしていたが、どうにか彼の頭を両手で掴み、立つヒロイン。
郁はちゅうっと音を立て蜜を吸い、左手はヒロインの右足の太ももを押さえていた。
舌先を尖らせると、赤く硬くなっているもう1つの突起を捕らえ、ツツツと突く。

「あぁあんっ!やあぁ…ん」

クリトリスの刺激に、ヒロインは仰け反り喘ぐ。

「ん…これもすげえ硬いな…乳首と同じだ…ふ、ん…」

郁の舌が形を変え、今度はクリトリスを下から上に、ゆっくりと擦るように舐め上げた。

「ふぁぁあんっ、イい…あぁん」

快感に身を任せていると、クリトリスからの刺激で乳首は更に硬く尖っていた。
もう、イってしまうのも時間の問題だった。
だが、自分がイけば郁は雅や聡の様に、眠ってしまうだろう。
もう2回もお預けを食らっているヒロインは、もう我慢するのが嫌になっていた。

「あぁあ…ね…郁…も、う挿れて…っ」

イく前に挿れてしまえば良いと思い、ヒロインは郁に懇願する。
が、郁は聞く耳を持たなかった。

「俺はあんたをイかせなきゃ…ぜってぇ挿れねえから。ヒロイン、あんたのイく所が見てえ…」

そう囁くと郁の唇がクリトリスに触れ、乳首と同じ様にちゅうっと吸い付いていた。

「はあぁんっ!やぁ、やだ…だめ…っ!」

身体が震え、乳首もピンッと立っている。

「やだじゃねえ…イけよヒロイン…俺の女だろ…ん、ふ…ちゅっ…」

郁の口内で、クリトリスが吸われ舌先で突かれる。
ヒロインの身体に快感が走り始め、もうイくのを我慢する事が出来ない。

「あぁあん、あんあん!イくっ、イっちゃ…」

ヒロインがそう、腰を震わせ首を反らして喘いだ時だった。

「郁!何故約束を守らない!?」

突然、部屋に喘ぎ声と水音以外の音が上がり、ヒロインは勿論、郁もクリトリスを舐めるのをやめた。

「てめえは…良い所で来やがって。邪魔すんじゃねえ」
「ま…まも、の…」

イく寸前にイけなくなり、ヒロインはもどかしさを感じながら、部屋に入ってきた魔物を見据える。

「質問に答えろ海賊風情が!折角青龍様が一目置かれて、貴様に言ったものを…」
「うるせぇな。俺はもう2度と悪さしねえってこいつと約束したからな。港町を襲い続けるってのは、もうチャラだ。分かったらとっとと行けよ。今取り込み中なのが分からねえのか?」
「郁…」

話の内容からするとどうやら郁は、青龍という者に頼まれて、港町を襲っていたらしい。
それを、ヒロインとの約束を守りもうしないと郁は言っている。

「貴様ー!成敗してくれるわ!」

郁の言葉に魔物は怒り、彼に向かってきていた。

「郁!」
「任せろヒロイン。この俺が…っ?!」

魔物が素早く放った術の様なものが、郁の身体を包み彼の身体は痺れてしまっていた。

「く…身体が動かねえ…てめえ、何しやがった…」
「くくく、その痺れの術は魔法でしか治せん。じっくりいたぶってやる」
「魔物風情がくそが…っ」

痺れて動けない郁の前に、ヒロインは服を直すのも忘れ魔物の前に立った。

「ヒロイン…?」
「郁、ここは任せて。こんな最低な奴…私が倒す!」

剣を構え、魔物を睨むヒロイン。

「なんだお前は。お前も痺れさせてやる!」

痺れの術を受けたら終わりだ。
ヒロインは、術が発動する前に倒すしかないと、魔物が術を唱える隙を狙う。

「水泡!」
「ぎしゃっ?!」

突然、魔物の体を水の泡が包み攻撃を与えていた。
魔法を放てる人は、ヒロインの中では1人しかいない。
赤龍が、ドアの所に静かに立っていた。

「赤龍さん?!」
「な…なぜ貴方は邪魔をする?!幾ら赤龍様でも…容赦はしませんぞ?!」

ヒロインと魔物は、赤龍の出現に同時に驚きの声を上げる。

「やれるものならやってみろ。…おいヒロイン」
「え?!(赤龍さんが名前で呼んでくれた…?!)」
「この雑魚をさっさと倒すぞ」
「は、はい!」

赤龍の言葉に、ヒロインは剣を構え直す。
赤龍に雑魚と言われ、魔物は怒りに身を任せ飛びかかってきた。

「おのれがー許さん!!」
「黙れ、水泡!」

赤龍の魔法が魔物を包み、動きを止めた隙にヒロインの剣が切り裂く。

「はあーっ!!」
「ギャアァア!!」

ザシュッとヒロインの剣が入り、魔物は倒れ消えて行った。

「やった…!」

露わのままになっている、大きな乳房をぷるんっと揺らしながら、ヒロインは飛び上がり喜ぶ。

「…っ…ヒロイン…服直した方がいいぜ…」

痺れに顔を歪ませ、それでもヒロインの揺れる乳房を見て、頬を赤くさせながら郁が言う。

「!や、やだ私このままでいたのね…」

赤龍にもバッチリ見られていただろう、ヒロインは慌てて乳房をカップにおさめ服を直す。
赤龍は、そんな事も気にしていないのか、スタスタと郁の元へと歩いていく。

「貴様が海賊のボス郁か」

膝を付き、痺れに耐える郁の前に、赤龍は立ったまま彼を見据える。

「…ああ、そうだ。俺が郁様だ、何か用か…」
「痺れを食らった様だな」

ヒロインは服を押さえながら、何故赤龍が此処にいるかのを疑問に思った。
彼は、ヒロインが1人で郁を倒せなければ、解雇すると言った。
それなのに何故、此処にいるのか。

「貴様は、青龍に頼まれたのか?」
「ああ…どうせ海賊をやってるなら、町を毎日襲えってな。だが…俺はもう2度と襲わねえって決めた。…ヒロインが俺の女になってくれたからな」

そう言い、ヒロインを見る郁。
赤龍もチラッと、ヒロインを見てからまた郁に向き直る。

「…治癒」

赤龍がそう呟くと、郁の身体が光に包まれていた。

「…?!痺れが消えた?…あんたも魔法使いか?青龍も同じ様な感じだったけどよ…」
「…」

赤龍は、驚く郁の言葉に何も答えず黙っていた。

「…まあいいや、悪いな治してもらっちまってよ」
「言っておくが、ヒロインは渡さん」
「え?!」

赤龍の言葉に、思わずヒロインは声を上げていた。

(赤龍さん、そんな事言ってくれるなんて…もしかして私の事…)

密かに期待するヒロインだが、それは直ぐに打ち砕かれる。

「この女は、俺の下僕でな。俺の旅に同行する事を望んでいる」
「下僕って…おい、ヒロイン、本当かよ」
「う、うん、まあ…(やっぱり下僕のままなのね…)」

期待した自分が馬鹿だったと、ヒロインはがっくりうなだれた。

「そういう事でな、こいつを渡すわけにはいかない。こいつの事は諦めてもらおう」
「…ヒロイン、あんたは…どうなんだよ?こいつと行く事…望んでるのか?」
「…うん、私…赤龍さんについて行きたい。それが私の今の旅の目的でもあるから…」

ヒロインは、ちらりと赤龍を見るが、彼は違う方向を見ている。

「そうか…なら仕方ねえな。あんたには痺れも治してもらったし、ヒロインがいなくても、もう2度と悪さはしねえよ」
「郁…いいの?」
「ああ。ヒロイン…あんたみてぇな良い女と出逢えて、あんたの身体を味わえたしな。もう、悪さはしねえよ。ヒロイン、気をつけて行けよ?」

そう笑顔で答えた郁は、本当にかっこいいと、ヒロインは心の底からそう思った。

「…郁…ありがとう…」

ヒロインも、根は優しい海賊のボスに心から感謝したのだったー。



郁と別れ港町に帰ると、海賊がもう襲ってこない事を知り、皆が喜びに包まれていた。
砂漠の町、港町と、ヒロインは2つの町を救う事が出来たのだった。
そして夜、町の人がせめてものお礼と宿を一晩タダで泊めてくれる事になり、ヒロインは1人ベッドに座っていた。

「眠れない…。だって、赤龍さんなんで助けに来てくれたの?私が、1人で倒さなかったら解雇だって言ったのに…。それに、幾ら下僕とはいえ、郁に私を渡さないって…」

自惚れだと分かっているが、それでも赤龍が助けに来て、郁にあんな風に言ってくれたのが嬉しかった。
ヒロインは、赤龍と話をしようと思い、隣の部屋を訪ねる。

トントン

「赤龍さん?」

ノックをしても返事はない。

「寝てるのかな…仕方ない、ちょっと外に散歩でも行こう」

宿を抜け、海の港の方へと歩いていく。
頬に当たる海の潮風は、何処と無く心地良い。
そして港の先で、水色の長い髪を風になびかせている青年の姿を見つける。

「…赤龍さん?」

ヒロインがその青年を呼ぶと、彼は後ろを振り向く。

「お前か、来なくていいものを…」

何時ものように嫌みたらしく言われるが、ヒロインはこのまま黙って引き返す気もなかった。

「赤龍さん、どうして私を…助けに来てくれたんですか?1人で郁を倒せなければ、解雇だって言ったのに」
「お前がまだ役に立ちそうだと思ったからな、それだけだ」
「赤龍さん…」

たったそれだけだが、ヒロインは嬉しかった。
解雇されずに済んだのだ、赤龍の旅には付いて行かなければならない、ヒロインは何故かそんな気がしてならない。
赤龍に惚れたというのが、1番大きい理由だが。

「赤龍さん…もう1つ、教えてくれませんか?どうして、旅をしているのか…」

今なら教えてくれる、ヒロインはそう思い赤龍に問いかけた。
赤龍は暫く黙っていたが、海の方を見つめ話始めた。

「…青龍という男が魔王を復活させ、この世界を自分の支配下にしようとしている。俺は、青龍の企みを止める為、旅をしている」
「青龍…」

度々、魔物達が口に出していた名前だ。
その男こそ、砂漠の町や、ここでの騒ぎなどの元凶だろう。

「そうだったんですか…教えてくれてありがとう赤龍さん。私も…羽の生えた女の人に、世界を救ってほしいと言われて…それで村を出て旅を始めたんです」

ヒロインの言葉に、赤龍は彼女の方を振り向く。

「羽の生えた?天使の様な女か?」
「そうです、正に天使様でした」
「……」

赤龍は暫く考える様に黙ると、ヒロインを見やる。

「ヒロイン、俺は少しお前を見くびっていた様だ。この先も俺の下僕として、正式に旅に同行する事を許そう」
「は、はい、ありがとう赤龍さん!(やっぱり下僕なのね…解雇よりマシだし、我慢我慢…)」
「…1つ言っておく」

赤龍は、ヒロインに少し歩み寄り、彼女の目を自分の青い瞳に吸い寄せる様にじっと見る。
惚れている男に見られ、ヒロインは頬を赤く染めていた。

「今後、男と肌を触れ合う行為はするな」
「へ?」

思わず、ヒロインは間抜けな声を出していた。

「言葉の意味通りだ、お前は意味が理解出来ないのか?」
「いや、あの…つまり、今日みたいな…事、ですよね?」
「そうだ、今後男と触れ合う様な事をしたら即解雇だ、いいな」
「は、はい!分かりました!」
「ふん、分かれば良い」

ヒロインの返事に、赤龍は満足そうに言う。

(もしかして…赤龍さん、嫉妬してくれたとか?ふふ、まさかね…)

勝手に妄想し、ヒロインはニヤニヤしてしまう。

「変な顔を浮かべるな、気味が悪い」
「へ、変な顔…」
「俺は先に寝る、明日は船で他の大陸に行く。寝坊したら置いていく、いいな」

赤龍はいつもの様にキツくそう言い放ち、さっさと宿へと帰ってしまった。

「気味が悪いって酷くない?!しかも、解雇しないって言ったのに遅れたら置いていくって!…けど、いいや。赤龍さん、私の事名前で呼んでくれる様になったし…ふふ、やっぱり嬉しい…」

郁に負けた時は如何しようかと思ったが、赤龍に解雇されなくて、本当に良かったとヒロインは改めて思った。
そして、軽い足取りで宿に帰りぐっすり眠る事が出来たのだった。



「赤龍さん、おはようございます!」

朝、港に行き赤龍に会うと、ヒロインは元気よく挨拶をした。

「…朝からよくそんな大声が出るな」
「はい、赤龍さんと旅が出来て嬉しいので。置いてかれない様、早起きしました」
「しなくていいものを」

赤龍はそう言うと、船へと乗り込む。
郁達が襲うのを止めたため、安心して今日から船が出せるとの事だ。
ヒロインも、初めての船に乗り込むと、大きく広がる海を見る。

「次の町では何が待っているんだろう」

期待と不安を半々にし、ヒロインを乗せた船はゆっくりと出港した。
次の大陸では何が待っているのか、ヒロインに想像する事は出来なかったー。





「青龍様、申し訳ありません!郁という海賊が裏切りまして…」

王座に座る青龍に、フードの男は頭を下げて言う。

「私の部下も、またあの女と赤龍様に…」
「女、か…」

青龍はそう呟くと、王座から立ち上がる。

「海賊などもうどうでも良い。それよりその女だ、赤龍が女を助けたと言うのだな?」
「はい、どうも私の部下から助けた様で…」
「女に興味など一切持たない赤龍が、その女と共に行動し助ける程入れ込むとは…。どの様な女か、見てみたくなったな」
「と、申しますと…」
「今度は、この俺が直にその女と会ってやろう」
「青龍様ご自身が行かれるのですか?」
「ああ。必要なら、この俺が直にその女を始末する。くく…楽しみだ」

青龍は赤い瞳を光らせると、妖しく微笑むのだったー。


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