沢村の場合






 「あー、今なら食器屋になれそう・・」

 ボソッと目の前の彼女が呟いたその言葉に、沢村は苦笑いを零した。

 「・・多分、まだまだ来るわよ」

 「・・・・うん、来てる。この世の皿という皿が私の元に来たんじゃないかなってくらい」

 忍田が新しい皿のシール台紙を彼女に渡したと聞き次第、唐沢をはじめとした上層部の面々も負けじとそのシールを集め始めたのだ。第一次シール大戦の幕開けである。

 「いります? ぶっちゃけ、私と克己の分あれば充分だから」

 「そうねぇ・・この前割っちゃったから、もらっちゃおうかしら」

 「どうぞどうぞ」

 そうでなくてもちょっとげんなりする彼女にいらない、とは言えなかった。

 「でもいいじゃない。それほどみんなから好かれてるのよ」

 いつもは派閥などでぱかりと割れてる上層部が、ここまでまとまって同じことをするのはだいたい彼女関連の時だけだ。まったく、彼女効果は絶大であった。

 「・・・・別に、克己以外には好かれたくてたまらないわけじゃないんですけど」

 そう言いつつ、耳まで真っ赤な彼女に沢村はちょっと笑った。こういう所が、たまらなく魅力的なのだろうが、彼女はまだ知らない。




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