林藤の場合
なんだか最近、シール台紙がよく集まる。
この前は城戸に渡され(なにか裏があるのではと何回か考え込んだ)、昨日は鬼怒田と根付に綺麗に貼られたシール台紙を渡された。
もうそれだけでゆうに皿が貰えるのだが、何故かムキになった唐沢までもが(本人は余裕ぶっている)シール台紙を二枚くらい寄越したので、ここ最近春のパン祭り、というより絶賛皿祭り状態であった。
「秘〜書ちゃん」
皆してどうしたんだとシール台紙片手に考え込んでいれば、そんな声とともに軽く肩を叩かれる。振り向けば、ニコニコした林藤がいた。
「えーっと、林藤、さん」
「お〜、名前覚えてくれてたんだ光栄だねぇ」
「これくらい、当たり前です」
あまり話したことがないので、ちょっと距離を置こうとするが林藤はニコニコ笑って距離を詰める。
ふと、握っていたシール台紙を見た林藤が何かを思い出したようにポケットをまさぐった。
「あー、ちょっと待ってな・・たーしかこっちに・・」
「?」
「おー、あったあった、はいこれ。集めてるんだって?」
そう言って差し出したのは、シールが二、三枚無造作に貼られた紙切れだった。
「あ、ありがとうございます」
素直にお礼をいって、空いた台紙に貼っていく。林藤はその様子を見ながら聞いてきた。
「今のところ、唐沢さんが一位かな?」
「あ、まぁ・・強も・・・・じゃなかった、城戸司令もなかなかなんですけど、その・・」
もう要らないんですけど、と呟いた切実な彼女の言葉を林藤は豪快に笑い飛ばす。
「いやー、ダメだな〜。唐沢さんあたりは完全に火がついちゃったから、しばらくシール祭りは続くな」
「え、えぇ〜・・」
林藤のそんな言葉通りに、シール台紙はどんどん来るのだった。