鬼怒田と根付の場合
ここのところ、躍起になって唐沢と城戸が菓子パンを食べている。
「皆さんお昼いかがいたしますか?」
会議後、ちょうど昼時ということもあり沢村がそう声を掛ければ、城戸と唐沢、鬼怒田、根付は一斉に菓子パンを取り出した。
「・・は?」
林藤はそれを見てけらけら笑い、忍田と沢村はぽかんとしている。唐沢も城戸や鬼怒田、根付を見て思わずポーカーフェイスを崩す。
もしかしたら彼がここで表情を崩したのは、彼女がここで半泣きになった時以来かもしれない。
「貴様のとこの阿呆がうるさいからな」
と鬼怒田。
「まぁ、たまにはこういうのもありだと思いましてねぇ」
と、すでにかなり溜まっているシール台紙を取り出す根付。城戸は黙って菓子パンの袋を開けている。
どうしようもなくその光景を沢村は写真に撮らえたかったが、そこはぐっと我慢した。
「またまたぁ、みーんな秘書ちゃんが可愛くて仕方ないくせにー」
俺も集めちゃおうかな〜、なんて笑いながら会議室を去っていく林藤の後に続く忍田も、菓子パンか・・と呟いた。
いつのまにか、あのお騒がせ秘書は唐沢だけではなく上層部さえも振り回し始めたと分かる一件だった。