城戸の場合
最近、唐沢が躍起になって菓子パンを食べていたので理由を問えば
「いや、なんでもついて来る点数シールが欲しいと仰せ使いまして」
だなんて心底楽しそうに笑って答えたので、思わず眉をあげたのが先日のこと。
もともと菓子パンをあまり好まない唐沢が、あんなにも連日昼に菓子パンを食べるのだからその仰せ使ったのは、おおかたあのやかましい少女からなのだろう。
ふと寄ったコンビニで、偶然にもその点数シールについての広告を見、城戸は思わず立ち止まる。25点で一枚ならば、多くて唐沢は25個菓子パンを食べなければいけないことになる。
城戸はちょっと考え込んだ後にむんず、と無造作に菓子パンを掴んでカゴに突っ込んだ。
「・・おい」
慣れないヒールでひょこひょこ歩く後ろ姿に呼びかければ彼女はちょっと嫌な顔をして振り返る。ボーダー内で最高地位にある城戸にこんな顔を出来るのは彼女だけだろう。
「・・なんですか」
「集めているのだろう?」
「・・・・は!?」
もうそんな顔も慣れたので、城戸は軽く無視して押し付けるようにシールを貼った台紙を彼女に渡す。
彼女はばっばっとシール台紙と城戸を交互に見てぽかん、と口を開けた。
「えっえっ、は!?!?」
戸惑う彼女をそこに残し、城戸はそそくさと去っていく。
「・・・・・・今日、雪降るかもしれない」
残された彼女は、そう呟かずにはいられなかった。