しあわせれんさ



ジャスミンの夢番外編。夢主が記憶を取り戻したあとのお話。




 「・・メガネくんたちは優しそうだし、キリもきっとなつくと思う。だからここに来た時だけでもいいから相手をしてやって欲しいんだ」

 初めて会った時、迅の後ろに隠れるようにしてこちらを伺うキリに言いようのないものを感じた。




 「うー・・もう無理頭に入らないー」

 「むむぅー・・ニホンはなぜこんな難しい事を勉強するんだ・・?」

 ほぼ同時にキリと空閑が机に突っ伏して弱音を吐く。三雲は参考書から顔を上げると二人を困ったように見つめた。

 「しょうがないだろ、みんなやってる事なんだから」

 「ゆーまの所為だからねー?ゆーまがおさむに誕生日会バラすから〜」

 「それなら、キリちゃんだってそうじゃん。キリちゃんがケーキケーキって騒ぐから」

 「二人ともやめろって」

 「むー」

 「はーい」

 三雲の一言で二人は再び気だるげに参考書に取り掛かった。

 今日は三雲の誕生日で、すっかりそんなことを忘れていた三雲を出迎えたのは、ケーキを運ぶ途中のキリだった。
 チョコでできたプレートに書かれていた自分の名前に、ようやく自分が誕生日だったのを思い出したのだ。

 「おー、オサム。お誕生日おめでとうございます」

 「あーっ! それまだ言っちゃだめだよゆーま!」

 「む・・? そうなのか?」

 「そうだよーっ!」

 結局、隠す必要のなくなった三雲の誕生会は、本人の目の前で現在進行形で準備が進められていた。もう少しかかる、と言った木崎に迅がそれならばその間せっかくなのだからキリと空閑は三雲に勉強を教われと、空き部屋の放り込まれたのだ。

 三雲からすれば、祝ってもらえる準備が目の前で進められている、といった状況が何ともむずがゆかったのでかえって助かったのだが、キリと空閑は色々ご不満らしい。

 「おさむにも、とりみたくサプライズやりたかったのに〜・・あ、ゆーまの誕生日は!?」

 「おれ? んー、知らないや。っていうか、事前に本人に言っちゃダメだろ」

 「あっ・・」

 バカだなー、と笑う空閑にキリは真っ赤になる。そんな光景に、思わず三雲も笑った。

 「修くん、キリちゃん、遊真くん」

 そこへ、雨取がやってくる。

 「あー、ちか! 準備できた?」

 「うん、できたよ。きっと修くん、びっくりすると思うな」

 「わー! 楽しみ!」

 「おい、今日の主役はオサムだぞ」

 そっか!とキリが笑えば自然と二人は笑った。

 まるで、連鎖みたいだと思った。キリが笑えばみんなも笑って、キリが喜べばみんな喜んで。彼女を取り巻く独特な優しい雰囲気がきっとそうさせるのだろう。あの時、初めて会ったあの時感じたものはこの優しい雰囲気だったのかもしれない。

 「あ、おさむ! お誕生日おめでとうございます!」

 ここなら、この連鎖の中でなら雨取だって空閑だって、重い物を下ろして自然と笑う事が出来る。

 「・・ありがとう、キリちゃん」

 そして、自分もそんな連鎖に連なって重い物を下ろして自然に笑ってしまうのだ。
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