類は友を呼ぶ






 類は友を呼ぶという言葉はご存知だろうか。気の合う仲間や似通った者は自然と惹かれ合う、といった意味合いである。

 何を隠そう、村上が所属する来馬隊の隊長である来馬辰也とその彼女ーー西条キリがそうだった。

 どちらも裕福な家庭で一人っ子で溺愛されて育つ、といった漫画なら高慢なキャラのステータスを持つ来馬とキリなのだが、高慢のこの字も微塵も見せないくらいにとにかく二人は器が広い。
 ある日来馬が少し照れながら、紹介したいと連れてきたキリは、顔良し容姿よし性格よしの三拍子が揃うハイスペックだった。

 その容姿良さでボーダー男性陣は、彼女が本部に来ると大体モチベーション上がり、キリの面倒見の良さと人の良さで一瞬にしてボーダー女性陣をめろめろにした。あの綾辻でさえも。

 「類は友を呼ぶって、悪い意味にしか使わないと思ってた」

 と誰もが、いつも集まっては忍田の悩みの種を増産していく髭やA級三馬鹿を見て思った。


 しかし、そんなキリには一つだけ欠点があった。人が良すぎる故に、人を悪く思えないのだ。



 「いいかしら、今日はいかにあの太刀川くんを社会的にベイルアウトさせるかが論点よ」

 うふふ、と形の良い唇を歪ませて月見が笑った。

 来馬が非番のとある日。鈴鳴の会議室に月見率いるオペレーター組、出水、来馬を除いた来馬隊がいた。

 「つ、月見さん・・社会的にベイルアウトって・・」

 完全にアウェイ感を身に刺さるほど感じつつ、出水は月見に言った。A級一位、完全に声が震えている。

 「あら・・・・なら、人生的にベイルアウトかしら・・?」

 「アッ、ハイ! もうそれでいきましょう!!」

 怒り心頭な月見のオーラに出水、半泣きである。
 何故この異様なメンバーで何を話しているのか、はちょっと時間を遡る。



 それは数日前の事で、たまたま廊下を歩いていた小佐野は前を歩くキリを見つけ、声を掛けようとした、が。

 「キリちゃん」

 「わぁっ、太刀川さん。こんにちは」

 先に太刀川が声を掛けたのだ。その頃からなんとなーく嫌な予感はしていた。

 「あの、辰也くんこちらに来てませんか?」

 「んー、来たかもさっき見たかも」

 いや、うるせぇお前はさっきまで忍田から逃走してる最中だったろ、と思わず口をついて出そうになるが、ここは我慢しておく。

 「そうですか、すれ違っちゃったんですかね・・・・」

 目に見えてキリはしゅん、とした。きっとキリに尻尾と耳があったのならば、今絶対にどちらも垂れ下がっているだろう。

 天使か? 天使だな、そういえば天使だったわ、とそんな可愛らしいキリに思っていると、ついにあの髭がキリに手を出したのだ。

 「じゃあさキリちゃん、俺がそこまで連れて行ってあげようか?」

 くいっとキリの腰を引き寄せてそういう下心全開な太刀川に、もしも小佐野がトリガーを持っていたのならば間違いなくぶちのめしただろう。

 「本当ですか!? ありがとうございます!!」

 しかし、真っ白な心を持つ大天使キリはそんな太刀川の下心に気付くわけもなく、目を輝かせてそのまま太刀川の思惑通りに一緒に行ってしまったのだ。
 当然、そんな情報は小佐野伝いにオペレーター全員に渡った。それだけでも十分皆を本気にさせたのだが、何よりそれを知った来馬が、ちょっと眉を下げて、

 「そっか・・なんか、なぁ・・」

 とボヤいたのだ。あの、来馬が。

 ギルティ、太刀川の有罪が確定した。
 それで完全にスイッチが入った来馬隊のメンバーとオペレーターが結託して今に至る。
類は友を呼ぶと言うよりも、類が友を呼んでしまった結果である。



 「・・何でおれも・・」

 思わず出水がそうごちれば、目の据わった村上がこちらを向く。

 「隊長の責任は隊員にもありますんで」

 いつもより1オクターブ低い声に冷たい視線、もう出水は泣きたくなった。

 「でも〜、どうやるの〜?」

 同じ太刀川隊の隊員である国近はそんな雰囲気に気付かないのか、スマートフォンでゲームをやりながら会話に入る。こういう時に馬鹿はいいな、と少し思った。

 「簡単よ、柚宇ちゃん。太刀川くんの人生を詰む詰むするの。原理は今、柚宇ちゃんがやってるツムツムと同じよ」

 「へぇ〜?」

 まぁ、と月見の言葉に小佐野が加える。

 「違うのはアイツの人生に一生フィーバーが来ないことかな」

 お前もうなんてことしてくれたんだ、と出水は頭を抱えた。なんだか忍田の気持ちがわかった気がする。

 「とりあえず、決行は明日の午後よ。本部に太刀川くん到着しだい、仕留めます」

 いいわね、と月見が部屋を見渡せば一同は揃って頷いた。



 「・・・・おかしいなぁ」

 キリはラウンジで紅茶を飲みつつ、太刀川を待っていた。
 あれから本当に来馬の元まで連れて行ってくれた太刀川は、さらに今日、本部を案内してくれると言ったのだ。

 いい人なんだなぁ、なんて思いながら待っているとまさか聞こえてくるとは思えなかった声が降ってきた。

 「キリ」

 大好きなその声にばっと顔をあげれば、柔和に笑う来馬が視界に入った。
 一気に体温が上がった気がして、キリはちょっと自分を落ち着かせつつ来馬の元に駆け寄った。

 「辰也くん! どうしてここに?」

 「なんか、キリに本部を案内するなら俺がいいだろうって鋼に言われて…ごめん、今日は太刀川さんと約束してたんだよね…」

 「う、ううんっ! 私、辰也くんとなんてすごく、嬉しいなぁって」

 そんなキリにこちらまで嬉しくなって、えへへ、と二人で笑いあった。

 ちょうどその時、太刀川はあの合同隊にフルボッコにされていたことを二人は知らない。











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