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「ゴールドは、私が私じゃなくても好きになってた?」


例えば、彼の名前が違っていても、容姿が変わっていようとたとえ女であっても、私は今となんら変わることなく彼が彼(彼女であっても)であるかぎり、ただ当然のように彼を好きになっていただろう。性別などなんの障害にもならないが、とりあえずは彼が紛うことなく男性であることに感謝する。


「はぁ?いきなりどうしたよクリス。頭イカれたか?」
「失礼ね、至って正常よ。例えばの話、私が男でもゴールドは私を好きになってたと思う?」
「えっお前男だったのか!?」
「例えばって言ったでしょう!」


冗談冗談、とカラカラと笑うゴールド。此方はそれなりに真剣に聞いているというのに、真面目な空気が嫌いなのか彼はすぐ話の腰を折る。最初は彼のそんな所が嫌だったが、彼と想いが通じあった今となってはそれも含めて彼の全てが愛しい。


「さぁな、仮定の世界のことなんて俺にはわかんねェよ」
「もう少し真面目に考えてくれたっていいじゃない」


ゴールドは一頻り笑った後、何かを考える素振りを見せることもなく、普段通りのまま答えを返した。確かに彼の言う通り仮定などいくら考えたところで何の意味も持たない。無駄なのだとはわかっているが、あくまで仮定だとしても知りたいという欲求は抑えられないのだ。女は愛を求める生き物なのだから。


「知らねェよ。ま、安心しろよ」
「え、何を?」
「例えこれからお前がどんな姿になっても、俺は絶対お前のこと見つけてやるから。一番にな!」
「…ゴールドったら」


彼の胸にしなだれながら、小さくありがとうと口にする。あなたのその言葉だけで、私はこれから先どんな困難にも打ち勝てる気がするわ。








たとえばのはなし


20120903

















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