選択教室からの帰り、ふと窓に視線を移すと屋上から薄くだが煙が見える。それが何なのか既に分かっている私は屋上へと足を向けた。



「やっぱりオサムちゃんや」


くたびれたコートに身を包み、ダボダボのズボンとサンダルでフェンスに寄りかかっている男は趣味の悪い帽子(というと怒こられる)を被り直してよお、と手をあげた。


「名字やん、どないした?」
「どないした?やないし。煙、見えとったよ」
「ホンマか!?誰か先生に見られてしもたかな?」
「いや、多分見られてへんと思う」


良かった、と口元を緩め新しい煙草に火を点ける。さして気にしてないなこの人。ゆっくりオサムちゃんの隣へ歩み寄りフェンスに背中を預ける。


「もうすぐ授業始まってしまうで」
「階段昇るの疲れたから自主休暇」
「この不良生徒」
「学校でタバコ吸ってる不良教師に言われたない」
「それもそうやな」


笑いながら煙を吐き出して私の頭を優しく撫でる。

ずるい。
この人にとってこの行為に意味なんてないんだから。私が勝手にドキドキしてるだけ、…馬っ鹿みたい。所詮は教師と生徒。それ以上でもそれ以下でもない。
彼にとって私はただのクソガキの中の一人に過ぎないのだから。


「ま、今回は特別に大目に見たるわ」
「…私も、今回は見なかったことにする」




手の届く距離

(こんなに近いのに遠い)





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優しくて鈍感なオサムちゃん。



110920






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