昼休み、騒がしくなる廊下から一際目立つ足音が聞こえてきた。
何となくその音の原因であろう人物が頭の中に浮かんで来た直後、壊れるんやないかと思うくらいの勢いで教室の扉が開かれた。
教室にいた奴らが釘付けになっとる先には、案の定脳裏に浮かんだ顔。
そいつはズカズカと俺の前までくるなり全力で手を机に叩きつけた。
「くららどないしよ!春が来てもうた!!」
「さよかさよか。外はまだ寒いで」
「そんなありきたりなボケいらんわ!!そうやなくて、今ごっつイケメンとぶつかってもうた!」
「イケメンなら目の前に居るやん」
「は?何処に?」
本気で顔をしかめる名前。…さすがの俺も傷つくで。
俺の傷心を気にも留めず名前は聞いてもおらんのに話続ける。
「廊下歩いとったら急に角からそいつが飛び出して来てな、思い切りぶつかってしもうたんよ!したらな、ごっつ心配してくれてな、また走って行ったんよ!」
その時の事を思い出したのかうっとり頬に手をあてる、正直うざい。
しかも、まだ続きがあるらしく「そんでなぁ…」と続ける。
「そのイケメン、顔だけやなく運動神経もごっつ良くてな!走り去った時のスピードは尋常やなかったで!」
「風や風!」と興奮気味に何度も机を叩く。…風?そいつもしかして……。
「なぁ、そいつ…」
「あー!ホンマついてへんわ!」
近くから聞こえた大きな声に俺と名前は同時に同じ方向へ顔を向ける。
「今日の日替わりのパン確保出来ひんかったわ!」
「浪速のスピードスターの名折れや!」とか何とか叫びながら大量の袋を抱えた謙也がこっちへ歩いてくる。
チラリと名前に視線を移すと謙也を見たまま完全に硬直しとる。
視線に気付かず、袋の中身を確認しながらサクサクこっちに歩みを進める謙也。
「あ、せや。聞いてや白石、さっき廊下で女子にぶつかってもうたんやけど…」
ドサリ。
謙也の手から袋が消えた。ついでに声も消えた。
落としたパンを拾おうともせんと名前を見て硬直しとる。
みるみる赤くなっていく二人の顔。
…え、ホンマに?
ノンストップマシーン
(とりあえず3人で飯食うか)
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二人して一目惚れという。
110411