…ば、バレないようにしなければ。
空が緋色に染まり始めた頃、私はなるべく気付かれないように行動を開始した。
今みんなはランニングに行っていて誰もいない。マネージャーとしての仕事も頑張って終わらせた。
タオルもドリンクもバッチリ。
今が、むしろ今しかチャンスがない。走って更衣室へ向かい鞄から荷物を取り出す。
そうして今度は部室へ走る。
こんなに必死になんて体育の授業ですらならないよ。
私の中で一番気を使ったってくらいの思いで気配を消した(つもり)で部室のドアを開ける。
目的のロッカーは…、
「…あった!」
「何してるんですか?」
「ひっ!」
振り返れば一番面倒な人の姿…。
「ど、どうしたの木手。ランニングは?」
「そんなものはとっくに終わりましたよ。それよりそれはこちらの台詞なんですがね」
何してたんです?
眼鏡に光が反射して目が見えないのが怖い。なんて言えば…。素直に言って馬鹿にされるのは嫌だ。
沈黙の中木手の口元が急に上がった。そう、それはまさしく意地の悪い笑い。
「そんな回りくどい事しないで直接渡せばいいではないですか」
「べ、別にプレゼントなんかじゃないし!これは平古場君の物をたまたま拾ったから…」
「俺は別に平古場君なんて言ってませんがね」
ああ、駄目だ!パニクってるこのままじゃまずい。
「だから違うって!ただ私は平古場君に…」
「わんがちゃーさびたが?(俺がどうした?)」
木手の後ろからひょっこり現れた今一番会いたくない人。タイミングが悪すぎる。
私は今彼のロッカーに手を掛け半分開けている状態だ。
この状態はまさしく…
「…変態?」
「そんなわけあるかぁ!!」
思わず力一杯ツッコんでしまった。どうしてこんな事に……
「ああもう木手のバカッ!」
「意味が分かりません」
自分でも意味が分からない。もう駄目だいますぐここから走り去りたい。
思考回路がうまく回らず、何故か平古場君に手に持っていた物を投げつけた。
「おっ?」
「別にいらなかったら捨てていいから!」
もう何でもいいとりあえず目的は果たした。部活なんてやっていられない帰ろういますぐ帰ろう。ゴーヤだって食べてやるよ!
ツンデレなんてもんじゃない
―翌日―
(名字…)(………)(その、プレゼントにふぇーでーびる。嬉しかっのみぐさぁ〜(プレゼントありがとう。嬉しかった))(…うん)
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ギリ間に合わなかったあああああああ!!!気付くのも遅かったし最低だ!
おまけに意味分からないし最悪だ!
でもおめでとう!凛君!!
110304