かえりみち





「で、よーやく解放されたわけですよー」

「そうか、永倉先生も大変だっただろうに」

「うん、なんせ相手は私…えっ、そっちの味方なの一くん」


私の彼氏なのにー、と頬を膨らますお嬢。
先日受けた学年末試験。あまりにもな点数を取ったお嬢は永倉先生の一週間の補習を受けることになった。
春休みが始まり、一週間。
やっと補習から解放されたお嬢は嬉しそうに剣道場までやって来たのは30分ほど前だ。
丁度稽古が終わり、久々に一緒に帰ることになった。


「まぁ、来年は数学やらないから頑張ったよー」

「そうか、数3Cは受験に必要ないのか」


駅からは別々の方向の俺たちは、学校から駅までの十数分が共有できる少ない時間の一つだ。
もっと寄り添いたいだとか、手を繋ぎたいだとか、分かれてから思い出したように湧く欲求。
明日こそ、明日こそと思って、お嬢を見送り電車に乗るなんてことは日常。


「一くんはとるの?数3C。理系だもんね、とるのが当たり前かぁ」

「あぁ、そうだな」

「だよねー。私はその分生物Uでも取ろうかなー、って思ってるんだー。好きだからさ」


そう言って上着から定期を取り出す。
あぁ、気付けばもう改札の前だ。
久しぶりに一緒に帰れたというのに、馬鹿真面目に進路の話なんてしてしまった。


「久しぶりに一緒に帰ると、話し混んじゃって駅までがあっという間だねー。あー、楽しかった」

「そ、そうか…」

「一くんは楽しかった?」


電車は、お嬢のが先に来るようだ。
先頭車両に乗れる位置で、電車が来るのを待つ。


「あぁ、久しぶりに話せて良かったと思っている」

「そっか、良かった」


微笑んで帰ったらメールする、と電車に乗って行ったお嬢に暫く手を振ると、振ったこの手が今日も繋げなかったことを思い出したが、次の会う時に繋げれば良いと思えた。



かえりみち


電車に乗ってしばらくするとお嬢からメール。
明日はデートか、絶対に手を繋いでやる。





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