土方先生の場合
土方先生の場合
「土方さんって、まだお嬢ちゃんとちゅープリとかとったことないでしょ」
「はぁ?」
古典の補習中、総司は突然そう言った。
なんなんだ、そのちゅーぷりって。
プリントに集中しろ、と言えば総司はそんなことするはずもなく、話を続けた。
「お嬢ちゃんが彼氏がいるんだから一度はやってみたいって悩んでたよ。全く不憫だね、こんな言葉も知らない男と付き合ってるなんて」
男ならそれくらいできなきゃダメでしょ、情けない、っとまで言いやがったところでスッキリしたのかやっとプリントに手を付けた。
ちゅーぷりがなんだよ、そんなもん俺だってできる、多分。
なんだかはわからねえけど、お嬢がしてぇって言うなら、今度のデートん時にでもやってやろう。
そんな安易な考えでいた。
「……えっ、土方先生それまじで言ってんの?」
「あぁ、ほら、ゲーセンに行きゃあできんだろ?行くぞ」
あの日以来ちゅーぷりが頭から離れない。
たまたま会う約束もしていたことだし、デートするときにやるのが普通の流れ、と言うものらしいので、デートも中盤に差し掛かったところで俺はちゅーぷり、やんぞ。と言った。
お嬢は理解できない、と言った顔だ。安心しろ、俺だって理解してない。
「ねぇ先生、総司に唆されたんでしょ」
ゲーセンに着いた途端、黙ってたと思えば、痛いとこ突いてきやがる。
ちげぇよ、と短く返せばじゃあ意味知ってるの?と問われ黙る。
「ちゅープリってさ、ちゅーして撮るプリクラのことだよ」
そんなもん、撮るの嫌でしょ?と俯くお嬢に、ここまできたら引き下がれねぇだろ、プリクラコーナー着くと適当に空いてる機械に入った。
「誰が撮りたくねぇ、なんて行ったんだよ。そもそも総司に言うんじゃなくて俺に言えよ。ほら、設定とかお前がやれよ」
慌てて美白モードだなんだって設定するお嬢。
…今更ちゅーぷりがマリカー的なもんだと思ってたなんて言えるわけねぇ。
なんだかんだで楽しそうに笑うお嬢を見たらとてもじゃないけど言えねぇ。
もう、どうにでもなれ。
「総司ー!ありがと!!ほら、撮ったの」
「うわ、本当にちゅーしてるじゃん、しかもえげつない方。ってか、お嬢ちゃんも調子に乗ってfamとか書いちゃって」
「まぁ、将来的にね!総司のお陰だからこのプリあげるね!携帯の充電パックんとこでも貼っといてよ!流石に見えるとこは困るからさ!」
じゃーね!って廊下を走り去ってったお嬢ちゃん。
他人のちゅープリなんて貰っても、まぁ、土方さんを揺する道具にはもってこいだから、言われた通り携帯の充電パックに貼ってあげた。
これでまた補講免除になりそう。