原田先生の場合




土曜の補習もこれで最後!さらばだ土方先生!なんて意気揚々とか教室から飛びしてちらっと職員室覗いてみた。やっぱりいた。
土曜の職員室といえばこの光景だ。
予想を反した馬の走りに競馬中継のラジオを壊さんばかりに暴れる永倉先生とそれを横目に笑う愛しの左之先生。
一緒に帰りたいなぁー、なんて思う健気な彼女。私だけど。


「お、お嬢じゃねーか!補習終わったのか?」


ドアの前でそんな光景を眺めていると、こっちを見た永倉先生はぶんぶん手を振って、左之先生と二三言会話をしてた。


「じゃあ俺も帰るか」

「おう!愛しの彼女がお待ちだもんな!羨ましいぜ、馬鹿野郎!」

「馬鹿、声がでけぇんだよ!じゃあな」


今日電車で来たから駅まで一緒だな、って微笑む左之先生はもう絶世のイケメン。
古典の魔の補習なんてもう覚えてられない。




「帰りに、デートするか!」


あと5分も歩けば最寄り駅だっていうときになって、何を言い出すのかと思えば、そんな素敵イベントの発案。


「えっ、だって、今からどこ行くの?」

「まぁもう遅いしな。ゲーセンでも行くか」


ここんとこ、デートって言えば遠出ばっかの大人っぽいやつばっかだったしな、っと笑って、高校生のデートっていったら帰り道プリクラとか撮るのが普通だろ?って、近くのゲーセンに入って行く。


「すげーな、今のプリクラ。俺んときなんてただの小っちゃいシールだったぜ。しかも落書きなんてできねーの」

「うわっ、それ私小学生ぐらいだった時のやつじゃん!」


適当に入った機種で盛り上がりながら設定はオススメのふんわりモード。
取るよー、ってカウントダウン始まる。


「どっちのカメラで取られんだ?」

「えっ、上だから!ちゃんとカメラ見て」


パシャっという音としばらくしてきょとんとした先生の顔とまぬけ顔の私が画面に表示された。


「ちょ、先生!撮るカメラ画面に矢印出るじゃん!ちゃんと見てなきゃー」

「あー、確かに」

「ほら、もうカウントダウン始まるよ!」


あと5枚しかない、実は先生初めて撮るプリクラ。失敗はできない。
めちゃくちゃキメ顔で撮らねばならない。

機械の「1!」という声と共に私の視界に降ってきたのはにこっと笑う先生の顔。


「えっ、ちょっ!」


慌てて画面を見れば、それは世のバカップル が絶対にするちゅープリ。
しかも先生が顔を斜めに傾けてくれたおかげで私の驚愕顔が見事に写ってる。


「全部ちゅープリにすればいちいちカメラなんて見なくていいだろ?」


お前だけ見てれば、なんて意地悪く笑う先生。
残り4枚も角度とキスの種類が変わったちゅープリになったのは言うまでもない。




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