俺は馬鹿か。
いや、確かに学生の頃から頭のいい方じゃなかったけど。
こんな、ノリで結婚しちまうなんて。



「ねぇ、お風呂湧いたよ?ご飯も炊けたけど、どーする?」

「……あっ悪い、風呂がどうした?」



目の前で手際良く夕食を盛り付けるのはつい1週間前に出会った俺の嫁さんだ。
結婚を前提に付き合っていた(と思っていた)相手に振られたところを見ていた名前は、俺に結婚しようと言ってきて、振られたショックで気が動転していた俺は、OKと言ってしまった。
翌日には名前は俺の家に住み始め、その日のうちに今まで貯めに貯めていた家事を全てこなして、仕事から帰ってきた俺を夕食と共に迎えてくれた。



「ぼーっとしてたんでしょ。…お風呂とご飯、どっちにする?って話」



どっちと聞いてきた割には、俺の座るテーブルにはもう夕食が並んでる。



「飯が先でいいよ」

「あ、じゃあサラダ出してくる」



1週間暮らしてわかったのは、名前は見た目に似合わず(本人には言えねえけど)家事が得意ってことと、絶対詮索しないってこと。
あの日だって、自分のことは話してたけど、俺のことは、俺が言ったこと以上詮索するようなことはしなかった。
自分のよく知らない人間と一つ屋根の下で暮らして、名前はなんとも思わないのか?



「あっ、名前」

「ん、どうしたの?」



サラダとドレッシングをテーブル置くと向かい側に座って首を傾げた。



「なんで、そんなに冷静っていうか、なんにも聞いてこないんだよ」

「私、質問するのとか苦手だからさ。なんか、余計なこととか、聞いちゃいそうだし」



つまんない喧嘩したくないし、と笑えばサラダを取り分けて渡された。
3日前に言われた、ほっといたら俺は野菜を食べないらしい。



「だけど、ほんとに俺に対して気になることとかないのか?これでも、旦那なんだけどな」

「えー…」



スプーンを咥えて難しい顔をしてしまった名前。
俺は受け取ったサラダを一口だけ食べて、メインのカレーを食べ始める。
そんな感じで静かになってしまった夕食。



「じゃ、じゃあさ1つだけすっごい気になってたこと聞いてもいい?」



名前がすっごい深刻そうな顔するもんだから、俺はカレーを食うのをやめて、なんだよ?と聞き返した。
心なしか、どきどきすらする。



「あのさ、左之さんって仕事何してんの?」

「はっ?」



飛び出した質問に目を丸くした。



「……まじで知らない感じか?」

「うん、なんにも言わないから実はスーツだけど就活してるんだと思います」

「それはないだろ、これでも高校で教師してんだぜ?」



俺の言葉を聞いた瞬間のこいつは何を言ってんだって顔、一生俺は忘れられない。

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