“大事な話があるんだ、今日は家にいてくれ”
もうHR始める時間じゃない?って頃に携帯がなった。
画面には左之さんって文字と背景には前に出かけたときに撮ったプリクラが表示されてる。
もちろんそのプリクラの左之さんは俳優のようなイケメン具合で、横でヘン顔をする私はちんちくりんの代名詞のよう、…電話が切れた。
でもまたすぐに画面は光り、左之さんと表示された瞬間に電話に出た。
家にいろって、私はいつも家にいるのに不思議な左之さん。
こんなに早く仕事を終えてのは初めてじゃないか?という早さで仕事を終わらせて、家路につく。
名前に会いたくて、伝えたくてたまらない。
出来れば名前の気持ちも同じであって欲しい。
心なしか上がった心拍数を下げようと家の前で深呼吸して、俺はドアノブに手をかけた。
おかえりなさーい、といつもの声が聞こえてどきん、とする。ガキか俺は。
いつまでも上がってこない俺を迎えに玄関まで来た名前を力いっぱい抱き締めた。
「おっ、どーし「好きだ」
腕の中で名前がびくん、と緊張したのが分かった。
「普通、結婚まで考えてたやつと別れたら落ちるだろ」
帰ってきたと思ったらずーっと玄関なんかにいて、
「でもお前はさ、そんなこと感じさせてくれなかった」
迎えに行ってあげると、ぎゅって抱き締められて、
「というか、俺の横でいつも笑ってる名前を見て、落ち込むことすら忘れてた」
左之さんの雰囲気がいつもと違うから、ドキッとした。
ぽつぽつと話す言葉をなんとなく聞いてるけど、何が言いたいのかわからない。
「俺、幸せもんだよな、こんな可愛くて気のつかえる嫁さんがいてよ」
私を抱きしめる力が強くなった。
最近、可愛いなとかよく言ってくれるようになったけど、今日のはなんか照れる。
「やっと気づいたんだよ。遅くなって、悪い。今更だけど愛してる。原田左之助は原田名前を愛してます」
愛してる、なんて初めて言われたんじゃない?
腕の力が緩まったと思ったら、私の唇に左之さんの唇が触れた。
一度も、愛してほしいとか思わず過ごしてきた。
ただ条件が揃ってたから結婚したんだもん。
それ以上なんて望むわけなかったのに、なんでだろ、すっごく嬉しい。
愛してるって言われることがこんなに嬉しいのって初めてかもってなった。
「名前…?」
「わ、私も好きなんだからっ、愛してるんだから!」
恥ずかしくて左之さんの胸に飛びつく。
左之さんは笑って私の頭を撫でるから、嬉しくてほっぺを擦り寄せたら、赤さんが俺も混ぜろと言わんばかりに私のお腹を蹴ったから、左之さんと顔を合わせて笑った。
fin.