背もたれのないベンチに、相手の背を背もたれとして座る。赤羽は両膝に肘を置いて、屈んで。コータローは赤羽の背をぐ、と押し上半身の体重をかけて。
沈黙、無言。そこに在るのは呼吸音。そして背から伝わる、鼓動。
初めに声を落としたのは赤羽だった。
「フー…お前の鼓動はいいリズムを刻んでいるな。悪くない」
目を見張るコータロー。ふ、と息を吐いて応対した。
「…素直に心地いいって言えよ」
「フー、勝手に解釈するな」
「間違ってねえんだろ」
「…」
赤羽は何も言わない。暗にそうである、と肯定しているのだ。遠回しのイエスにコータローは擽ったい気持ちになった。そして口を開き何かを言おうとする。ぱくぱくと迷う口元だったが、やがて決心したように息を吸い込んだ。
「………お、れも…嫌いじゃねえ」
息を吸った割にはそれは小さくか細い声で、今度は赤羽が目を見張る番だった。それから、可笑しくなって軽く吹き出した。
「お前も素直に言ったらどうだ」
「ばっ…俺は素直な気持ち言ってんだろ!」
「どうだか」
勢い良く赤羽の方を向いて吠えたコータローだったが、赤羽は口元に笑みを湛えたまま目を閉じ軽くあしらうだけで、コータローはうーと唸りつつ正面に向き直った。
「じゃあ俺から、お前へスマートな一言」
目線だけ赤羽に向け、コータローは疑問の声を漏らす。が、それも直ぐに絶句へと変わるのだった。
「あいしてる」





初あかこた発掘

20130321

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