赤い色が好きなヤツは、よく俺をからかう。例えばこんな風に。
「…ぶっは!ひ、ひひ、ひあははは…!や、てめ、ヤメロっ」
「フー、ヤメロと言われてやめる奴はまずいないだろうな」
不意打ちで、両脇を擽られるとか。
何食わぬ顔で堂々と擽るのがまたムカつく。と思うのだが、そうも言っていられないのが今の状況だ。簡単に背後を取られてしまった俺も俺だ。何せ、こうなることが予想し得たのだから。
「あっかば…てめ、まじ後で…覚えてろよっ!」
「その前にお前が忘れるだろうな」
「んなわけ、ひやはは!」
こうなると埒があかないのがいつものこと。俺ももうこう何度もからかわれると諦めが入ってきてしまう。不意に擽りの雨が止み何だ、と背後を見やった瞬間、勢い良く肩を掴まれぐりんと正面を向かされた。
「はっ?なん、ってちょっ近い近い近いってのバカ!」
驚く暇もなく目の前には赤い目で、直ぐに焦点が合わずクラクラした。いや、それよりも心臓が跳ね上がって、呼吸がままならなくなってクラクラ。キレイな顔の人間に見つめられたら誰だってそうなるはずだ。いくら唾を吐きたくなるくらいキライな野郎が相手だったとしても、そうなるはずなんだ。
そこから何とか持ち直して平静を装うが、バレたかバレてないかはその赤いカラコン越しではわからない。
「イイな」
「あ?」
「その顔だ。なかなかそそる顔をする」
「…そっ…?!」
「そうそう、その顔もイイ」
唐突な一言にまんまとハメられてカッと頭に血が上る。平静も何もない。装うなんて出来ないくらいに、俺の顔はまさに茹でだこ状態だった。くそ、キライなのに。キライなのに、
「僕の好きな色だ」
するりと頬を撫でられてしまったら、もう固まるしか出来ないじゃないか。







20130321

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