タイトル通りまんまif同棲





「ただいま」
「お帰りなさい」
そんな当たり前の日常的挨拶が嬉しい。ふとそういう風なことを思い苦笑した。
部屋に入ると陸は台所に立っていた。もともと陸は料理をあまりしたことが無かったらしいが、それなら俺がやるよと言ったら逆に「貴方に頼りすぎたくありません」と大真面目に言われ今に至る。陸は大体のことは器用にこなすタイプなので日に日に上達しているのがよくわかる。最近では俺が忙しいのも相俟って、食事に関しては甘えきりだ。まあ、陸が満足そうだからいっか。
「今日は早いですね」
「今週が遅かったんだよ…何しろ俺と鉄馬だけだからね、やること多くて」
「お疲れ様です」
「どーも」
にっこりと笑う姿は上機嫌そのものだ。ここ一週間、忙しすぎてあまり顔を合わせていなかったからか。仕事に加え、新たにできた付き合いで外食も何度かあったから尚更。
鍋の様子を見ている陸に近付いてその身体にがばりと抱きついた。
「うっ、わ、危ないじゃないですか!」
「もうね、あんまし休めてないし…足りない…」
凭れながら、溜息と共にポロリと愚痴を吐き出す。俺はあまり愚痴とか、そういうしょーもないことは零さないタイプだけど、今日は何となくそんな気分だった。思ってるよりも疲れてんかな俺。一方の陸は動揺しているのが丸わかりで、ビクッとはねて恐る恐る尋ねる。おおこれは、ヤらしーい方を連想してるね。
「た、足りないって…ご飯がまだ、」
「やだなあ陸。そういう意味じゃないんだけどねえ?」
からかうと途端に体温を上げて顔を背ける。温かいし本当に可愛い生き物だ。そういう反応をされると益々虐めたくなるってことをわかっているのだろうか。
「まあ間違ってないんだけどさ。うーん、陸足りない…補給補給」
「…後でオネガイシマス」
「あらら、じゃあ」
恥ずかしさか気まずさか、すっかりぶすっとしてしまった陸に軽くキスをした。不意打ちが苦手な彼は眉尻を吊り上げて口をぱくぱくさせる。
「っキッドさん…!」
「後で、よろしく。楽しみにしてるから」
言い残して俺はさっさと台所から退散。ちらりと背後を窺うと陸が赤くなりながら意味もなく鍋をかき混ぜているのが見え、思わずまた苦笑した。





ちゃっかり同棲うまいと思います

20130321

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