「さみ…」
我ながら痛々しいほどに赤くなった指先を見、息を吐く。はあ、と温めるように指先に吐きかけても大して効果はない。さみいなあ、早く帰りたい。だがしかし、雪像を作らなければ後々うるさいのでやるしかないのだ。人手が足りないとか当たり前だろ。あんなデケエ雪像をあんな短時間で作れと言う方がおかしい。
それにしてもこき使いすぎだと思う。いくら部内で競争社会を作りたいとはいえ、こんな労働までやらせるなんて。雪ン中でぶっ倒れてやろうか。って寒さで思考も凍りついたようで、バカなことしか考えられない。
「あ、棘田氏」
「げ」
すると我が学園のスーパールーキー兼エース様の大和くんご登場。面倒くさいなコイツに出会すとは。たしか一軍サマは練習を終えた頃だったはずだ。身体を動かしていても外気は冷えるようで、鼻の頭なんかは赤くなっている。
「何してるんだい?あ、隣に座るよ」
「許可してねえぞ」
ギシ、と右側が軋む。構ってやる義理はないので俺は凍えた指先を温めることに専念した。…しようとした。隣の大和が突然俺の手を掴んだ。
「冷たい…どうしたんだ?」
「離せ、ったく…雪触ってりゃ嫌でもこうなるっての」
「ああ、なるほど。君は冷え性だしね」
大和は俺の指先を暫く見、そしてデカい両手で俺の両手を包み込んだ。あったかいと言えるほどではないが、冷たさは和らいだ。それから大和は赤い指先に自らの息を吐きかけた。
「うっわ、ちょ、…っ大和!」
「ん?」
「お前な!そんくらいっ自分でするっての!」
「いやあ…はあ、俺が君にしたくて」
人から息を吐きかけられるっつうのはここまで恥ずかしいことだったのか。ひとつ俺は覚えた。脳内で冷静に処理してはいるが目の前の光景には目眩がする。この年下イケメンは何がどう狂ったのか俺に愛を囁く野郎で、しかも俺もなんだか満更でもない感じがしている。とんでもなくクレイジー。だからこういう、誰が見てるともわからない場でバカップル共がやりそうなことをするなんて色々、アウト。
「ヒッ?!」
更に大和は赤い舌を出してペロリと舐める。ぬるりとしたあたたかさが指先を包んで、ぞわぞわする。
「バカお前っ!何やってんだよ…!」
「あったらくらいか?」
「口離してから喋れ!」
左手は大和の右手に掴まれたまま、俺の右手が餌食となっている。人差し指の腹を舌先がなぞり、時折わざとなんじゃないかと思えるような水音を立てる。中指、薬指としゃぶられる頃には全身熱を帯びていた。大和もそれがわかったらしく、漸く俺の右手を解放した。濡れた指先をポケットから出したハンドタオルで拭われる。
「…棘田氏…すごい顔してる」
「誰の所為だ…!」
「はは…もう冷たくないね」
「あーもうお前…マジでこういうの、やめろ」
「どうして?周りには誰も居ないだろう?」
「そういう問題じゃねえって何度言やあわかるんだ…」







20140130

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