知ってる。遠回りになるのにわざわざ駅まで送ってくれてること。頼んだ覚えはないと言っても俺が好きでやってるだけだと笑って言う。だが今日みたいに21時を過ぎてまで送らなくていいのではないか。
「大和…お前家着くの何時になる?」
そう訊ねると大和は目線を斜め上に逸らして微妙な顔をした。やめとけお前はバカ正直だから嘘なんざつけやしない。自分でも嘘は無理だと諦めたのか、一度目を瞑ってぎこちなく答えた。
「………21時半頃かな」
俺は盛大に溜息を吐いた。一人暮らしの男がそんな時間に家に帰っちゃ、家事やら何やらやらなきゃならないことさえ満足に出来ないだろう。次の日の朝練だってある。だからお前はバカだって言うんだ。
「ガキじゃねえんだから俺だって普通に帰れるっての」
「だが俺は棘田氏と長く共にいたい」
「…考えてみろ、俺ら家よりも学校のが長くいるんだぞ?」
「そうだな…しかし学校ではアメフトと勉学が占めていて君は足りない」
こっちは見飽きるほど居ると思っているのにあれで足りないと。驚異的だな大和猛。このストレートな物言いに慣れてしまっている自分も怖い。
21時過ぎともなれば駅前でも人通りは少ない。無駄に消費しているであろう電灯に照らされた時計を見、そろそろ電車が来ることに気が付いた。俺は大和のネクタイをグイグイと引っ張った。するとヤツは少し腰を曲げて距離を詰める。コイツは無駄に背が高い。いやまあアメフトに限らずスポーツやるのに高身長は有利だが、それ故にいろいろ不便なこともある。加えて身体が頑丈だから引っ張るだけじゃあ傾きやしない。コイツが察して身を屈めてくれないとこちらも困るのだ。
「…まあお前がいいってんならもう知らねーけど…俺だって少しくれえは気にすんだからな」
大人しく話を聞く大和にキス。同時に構内アナウンスが流れたのでネクタイからぱっと手を離した。
「じゃあな」
遠ざかりながら言うと、フリーズしたらしい大和が呆然とした顔で見返したからべえ、と舌を出してやった。もうぜってーあんなことしねえ。階段を一気に駆け上がって改札を通る頃には、何の所為でこんなに心臓がバクバクしてるのかわからなかった。





私の脳内補完:大和くんは学校近くのマンション?アパート?で一人暮らし
棘田氏は学校の最寄り駅からふたつくらい離れた駅近くの家に住んでいる
でもなー帝黒なら寮ありそうだなー二人とも元々遠くからきてるし

20130322

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