『つめいたくてあつい』



何度「好き」だと言われても、それは肉親に対する愛情のようなもの(そう例えば、3つ年の離れた兄貴に対するような)だと思っていた。

それくらいの時間は一緒に過ごしたし、それくらい近くに、俺たちはいた。


実際、近過ぎて見逃していたのは俺の方で

いつまでも子供だと思っていたあいつは、俺が思うよりすっと大人だった。



「準サン、オレ、アンタのコト、好きだよ」

そうやって、あいつにしては妙に改まった調子で言われても

「あーそう、それはどーも」

なんてテキトーにあしらって。


それはあいつの腹ん中にじわじわと澱を溜めていく行為であったとも知らず。




「準サン!」

手首をつかまれ、引き寄せられる。


あの、ちっちゃくて泣き虫で、いつも兄貴の後をくっついていた利央の、ドコにこんな力があったのか。

驚いてその手を見ようとするが、逆の手で顎をつかまれ、それは叶わない。


強い光を湛えた眸に射竦められる。


「何だよ…。はなせ…っ」

身を捩り抗うがその手はびくともせず、俺は言い知れぬ恐怖を感じた。


………誰だ、

これは、誰だ?


俺は、こんな男を知らない。


俺が知っているのは、小さくて、泣き虫で、甘えたがりの子供で、


こんな、つめたくてあつい目をして見下ろしてくる男を、俺は知らない。





大分前に書いたのを蔵出し利央準SSS。
いつまでも利央は子供だと思ってる準サン。
不意に襲われ動揺しまくり。

2005/03/28/フジイ


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