CLAP THANKS
御礼小説 // 害悪細菌






彼は死んだ。

そう、彼は死んだ。

私は彼に関わる物を持っているわけではなかったし、彼がそれを許したのはたった一人なのだとわかっていた。

私が彼に持っていた彼に関わるものは、私が彼を好きだという、最悪なまでの気持ち以外になかった。

彼が死んだのなら、私はそれさえも手放さなければならないのだとわかったから。

彼が唯一としたあの子の色を持つ海に流そうと決めた。

彼への想いをこれでもかという程したためたデータを容れたメモリーを瓶に入れて密閉した。



「あはは。これで私は何もなくなるのかぁ」



私は何も持っていなかったから。

唯一持っていたのは、彼への想いだったから。



「ばいばい、いつかまた会えるかなぁ」



瓶を思いきり振りかぶって、海に投げた。








また会う日までサヨウナラ
(「なに、泣いてるんだ?」(再会が早過ぎるよ、神様))
「きつねのあかり」(c)ひよこ屋