夢の名残を / 9



「――っ、ん……っ」


ねだるように収縮して吸い上げる、そこから引き抜かれたものの代わりに
待ち望んでいた熱があてがわれる。
総司の両手が斎藤の腰を抱え込んだ。

押し当てられた先端から、は、とつく息の合間にゆっくりと侵入される。受け入れた質量の分押し出されるように、
きつく閉じた目の端からじわりと生理的な涙がこぼれた。
全部を飲みこまされて、何度も荒く息をつく。


「……っ、は……っ」
「……辛い?」


総司の息も上がっている。薄く目を開けふるりと首を振ると、よかった、と熱のこもったかすかな声が聞こえてきた。
そのまま首筋に頬を寄せてくる。


「……っ、総、司」


小さな獣が仲間を確認するように、鼻先を擦り付ける。
合間にちゅ、と薄い皮膚をついばまれて、たまらなくなった。


「……ずっと、このままいたいな」


耳元で声が囁く。汗ばんだ肌を重ねたまま、濡れそぼった互いのつなぎ目は今にも発火しそうで、
より強い刺激を待っている。総司も自分も。
けれどこれ以上なく近くで熱を分け合える、今が続けばいいとも思う。同じくらい強く。
伝える代わりに、総司の背に腕を回す。
引き寄せるように力を込めると、総司の息はより熱く感じられた。


「……一、くん」
「っ、あ」


耳の後ろを吸われる拍子に、ぐ、と、奥まで突き上げられる。反射で目を閉じるとまた、
まなじりを汗でないものが伝った。少しの刺激ですら、次から次へと快楽を目覚めさせる。
身の内で膨らむ情動に斎藤はぎゅうと眉を寄せた。


「……そういう顔、ずるい、よ」
「……あ…ッ」


膝裏を抱えこんで、これ以上ないほどにまで総司が入り込んでくる。奥の奥まで押し開かれたそのあと、
ゆるゆると引かれ、また穿たれた。


「――あっ、……やめ、動く、な……っ」
「……無理、もう」
「ひ、あ……っ」


ず、と擦れあう場所が卑猥な音を立てる。指先で探り当てられた場所を何度も行き来されて、唇の隙間から
ひっきりなしに声が上がるのを止められない。ただ総司の背にすがる。


「っぅ、ん……っ、ああっ」


深くまで突かれ、激しく揺さぶられる。
浅くせわしい呼吸を繰り返す中、敏感な一点を擦り上げられて息を詰めた。


「っ、は、――っ」


びくびくと跳ねる体の奥で、弾ける熱を受け止める。上がりきった息をなだめきれないまま、
斎藤はぐったりと弛緩した腕をもう一度総司の首筋に絡ませた。
応えるように、頬に一度だけ口づけて総司はまたゆっくりと動き始める。
溶けきった内側は簡単にそれを受け入れて、熱を伝えるためにもう一度、覆い被さる体を引き寄せた。








 











ひやりとした感触が額にふれる。
それに導かれるように、斎藤はうっすらと目を開けた。視界はなにかに覆われて暗く翳っている。
いぶかしく思いながら、額からまぶたにかけて冷やすようにあてられていたそれを手に取り頭を起こす。


「起きた?」
「……総、司」


いつの間に眠ってしまったのだろうか。
どうやら総司はずっと隣で目を覚ますのを待っていたようだ。壁に背を預けて座りながら、
その傍らの手桶に今しがた取り替えたものらしき手拭いを浸す。
ちゃぷ、と水面が小さな音を立てた。


「これは」
「ん?ああ、無理させちゃったかなって」
「……そんなことは」


ない、と返事をした、その声が掠れているのも気恥ずかしい。
自分で身につけたのか着せられたのかわからない、ゆるく身体に巻き付いている着物を確かめあたりを見回す。
あれから一刻、いや、半刻程度だろうか。
障子は照らす陽に赤く染められていて、外はきっと見事な夕暮れなのだろう。
ぼんやりとそれを眺めながら、斎藤ははたと我に帰る。


「いかん、夕餉の支度を」


今度こそ跳ね起きると、いいから、と総司は慌てるでもなくそう言った。











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