「尊敬」


手に。


「友情」


額に。


「厚意」


頬に。


「愛情」


唇に。


「憧れ」


瞼に。


「懇願」


掌に。


「欲望」


腕に。首に。


ひとつひとつ、ゆっくり言葉にして。ゆっくり唇を落とす。
全てが済んだとき、那月はゆっくり顔を上げて微笑んだ。


「友情のキスなんて僕たちには必要ないんですけどね、」


――ハルちゃんのおでこにするの、すきなんですよ。僕。

今一度。甘い色の前髪を掻き分けて唇を寄せる。弾けたリップ音が、甘ったるい。
顔を離して視線を合わせるように覗き込めば。涙を含んだ日だまり色が戸惑いながらも若草色を捕えた。


「那月、くん」


はあ、と甘い吐息が漏れた後。するりと細い指が伸びてきて。吹き出物ひとつない男の肌をなぞる。


「ん?どうしたの、ハルちゃん」


頬を滑る指先にぞくりとする。ただそれを表には出さず、しれっとして見せて。沸き上がった感情も、熱すらも、全てを内側へしまい込む。

指先は那月の頬を離れ、自らの唇へ。


「額も…ここ、も、全部…。私…那月くんに……その…キス…されるの、すき、です。だから、」


――もっと。

それを合図に、那月の瞳は瞼の向こうへ消える。こつりと額をあわせて、


「仰せのままに。お姫様」


至極嬉しそうに微笑んで、唇へと最高に甘いキスを、贈った。




KiSS
(愛する、貴女へ)






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